君と見つけた美しい世界を「希望」と呼びたい。

 ぼんやりとしたまま彼の姿を見ていた。きっと、今起きたことが理解しきれていなかったのだろうと思う。
 だから、そのまま答え合わせをして、授業のチャイムが鳴ったときにやっと全部を理解した。

 当番のかけ声で起立して、それからあいさつを終える。立ったまま、黒板に書かれた彼の文字をじっと見る。

 なんで鷹野くんはいきなりやると言い出したんだろう。どんな意図があったのだろう。
 難しい問題をやって評価を上げる? たまたま答えがわかっただけ? 
 そんな理由だろうか。そこまで考えて、いや、違うなと考えを取り消した。

 今まで彼は、こういうことが何度もあった。
 緊張して言葉が出なくなっちゃった子に、『さっさと終わらせたいから俺が先やる』と言ってさり気なくフォローしたり、体育の後、ある子がケガをしていて真っ先にそれに気がついて保健室へ行ったことも。

 いつもは隠れている、彼の素の姿なのだろうか。普通だったら見逃してしまう小さな呼びかけを、彼は拾えるのだろうか。

 掴めない。分からないことが多すぎる。やることが全部想像がつかなくて、全く意図が分からない。
 でもその自由さというか、気まぐれというか、それに助けられたのは事実だった。

 珍しくまっさらな白紙のノートをしまって、その流れで隣を見る。

 いつの間にか知らないうちに、またいつものように眠っている。
 きつく閉ざした瞼が、まだ私が知らない彼のことを物語っているようでじっと見入ってしまう。

 どんな姿を持っているのだろう。私がまだ知らない、彼の姿はなんだろう。
 知りたい、と思った。強く、強く。

 あの水晶のように光る眼には、どんな世界が映っているのか、知りたい。