いつものように、枕元で規則的な電子音が響いた。

 「ん~……」

 ゆったりと心地いい空気の中で寝ていた中を起こされて、ふわりとあくびをしながらうるさく鳴っているアラームを止める。
 寝ぼけながら時計を見ると5時半だった。

 ここから寝ようとしても絶対寝れないな、なんて思いながら重い体を動かして、シャアッと勢いよくカーテンを開けた。

 「眩し……」

 朝の低い位置にある太陽の光が、薄暗かった部屋を一気に照らす。
 寝起きの目にはその光は強くて、目を細めながら窓をのぞいた。

 いつもと同じ光景。だいたい私が起きて窓を見ていると、左の方からカーキー色のダウンジャケットを着たおじさんが、犬の散歩で家の前を横切っていく。そしてうしろの方から、自転車に乗った若い女性がやってきて、散歩している人を追い抜いて、狭い路地に入っていく。
 きっとこの5分後くらいに、近所のおばちゃんが出てきて、庭先の掃除を始める。
 全部全部、見慣れた光景。

 散歩のおじさんを見送ってパッと空を見る。
 明るくて青空が見えているところもあれば、奥には鈍色(にびいろ)の分厚い雲が見えた。
 今日は午後雨が降るかな、と予想して、またばふんっとベットに倒れ込む。

 空を見るのは、もう私の日課になりつつある。あんなに遅くに寝ておいて、結局早く起きちゃうから、朝はこうして空を見るのがいつものルーティーンとなっていた。

 いつもはこの後、借りていた本を読んだりするけれど、あいにく今は本を持っていないし、それよりも先にテストの勉強をしなければ。
 軽く髪を縛って、昨夜広げていた勉強道具の前に座り、そっとペンを持った。