発散する熱量による温度差。

「早く行けよ、クソが!」

 ハンドルを叩く音がして、体がビクッと震える。

 ひえぇー! この人、ヤバすぎるー! 誰か助けてー! ──とりあえず近くを走る車のナンバーの語呂合わせをしながら時間を潰す。

 11-22(いい夫婦)25-25(ニコニコ)11-73(いい波)──その時だった。静香の目の前に、鉄道の駅が現れたのだ。

 これぞ、天の助けー! ──静香の目が希望に光り輝く。カバンを力いっぱい握りしめ、鼻息を荒くしながら勢いよくドアを開け放った。

「あーっ! あんな所に駅があるー! 時間も時間なので、私は電車で帰ることにしますね! 今日はありがとうございました! ではでは失礼しまーす!」
「えっ⁉︎ お、音羽さん⁉︎」

 来間の声が背後から聞こえたが、そんなことはお構いなしと、静香は猛スピードで駅までダッシュする。

 それはまるでサーキットを走るスポーツカーさながら、そして音速並みの速さでメッセージを打つ。

『今日は楽しかったです。ありがとうございました! ただ来間さんには私よりもっと合う方がいらっしゃると思います。陰ながら来間さんの幸せを祈ってますね。ではお元気で』

 その時、ホームに電車が到着するのが見えた。静香はダッシュで電車に乗り込むと同時に、送信ボタンを押す。

 そして重低音から解放された胃袋は、空腹のため大きな叫びをあげたのだった。