発散する熱量による温度差。

* * * *

 空が赤く染まり始めた頃、ようやく来間が我に返った。

「あぁ、すみません! ついいつもの調子で夢中になってしまいました!」
「いえ、気にしないでください。でもそろそろ時間も時間ですし……」
「そうですね、ではそろそろ帰りましょうか」
「はい! そうしましょう!」

 来間の提案に、思わず強く頷いてしまう。何しろここに到着してから二時間、座席に座り、車を見続けて過ごしていただけなのだから。

 あぁ、やっと解放されるー! ウキウキしながら再び助手席に座り、車が走り出すとホッと胸を撫で下ろす。

 しかし静香の気持ちとは裏腹に、車は渋滞にハマってしまった。パンクロックが流れる車内で、腹に響く重低音が、静香に少しずつダメージを与えていく。

「あの……こんな渋滞にハマるなんて思いませんでしたね! 早く解消されないかなぁ!」

 なんとか明るく振る舞ってみた時だった。

「チッ……」

 えっ、今この人、舌打ちしなかった⁉︎ ──静香は目を瞬き、思わず耳を疑った。

「クソッ……早く進めよ……」

 あぁ、どうしよう! この人、静かに暴言吐いてるし! ──何かしていないと気が気でなくなり、静香はカバンからグミを取り出して食べようとした。

「音羽さん!」
「は、はいっ!」
「車内では食べ物はやめてもらえますか? 汚れるのが嫌なんで」
「わ、わかりました!」

 静香は泣きそうになるのを堪えながら、慌ててグミをカバンに押し込んだ。