「はあ、はあ…」

 疲れ切ったエイジはようやく、監視カメラなどのない田舎町に逃げ込む事に成功した。

「はあ…。ここまで来れば……」

 だが安心したのもつかの間だった。

「そこまでだよ、エイジ」

「……缶コーヒーを飲む時間すら与えてくれないのか」

「アラートレベル5。第一級(ファースト)ソルジャーの可能性85%」

 神秘的な雰囲気を醸し出している美少女『R.I.L.M(リリム)』が、即座に目の前に立った男の危険性を伝える。

「ふーん、キミがエイジか。私がここに来た理由はもう分かっているよね?」

 刹那、黒いスーツに身を包んでいた、一見ビジネスマン風の男の姿がかき消えた。

「遅い!」

 次の瞬間には男は、エイジの目の前に立っていた。

「!」

「やれやれ。もう少し私を楽しませて……」

 リリムが危険を知らせた通り、男の戦闘能力は第一級ソルジャーのそれにふさわしいものだった。
 だが───エイジは男の攻撃に反応して防御する。

「何っ!?」

 男は驚いた表情でエイジを見るが、次の瞬間には胸部がへこみ、口から血を流していた。

「『アイランド』も地に堕ちたもんだな。今はこの程度の男でも第一級ソルジャーになれるのか」

 エイジは吐き捨てるように呟くと、念の為死体を確認する。
 武器や現金など、役に立つ物を持っているかも知れないからだが。

「………お。結構武器を持ってんな」

 男のアタッシュケースの中には銃や爆弾など色々なものが入っていた。エイジはアタッシュケースごと戴くことにした。
 リリムも男の死体をスキャンニングした結果、驚愕の事実を知る事となる。

「………エイジッ!!」

「なんだ?」

 リリムが一度言葉を切ると、エイジに衝撃の事実を伝えるべく、その音声を最大音量で流す。

「この男の腹部に、機械反応があります!」

「……なに!?」

「しかもこの反応は……まさか!?」

 リリムが言葉を詰まらせたその時。男の死体が突如爆散した。

「くっ!?」

 エイジは咄嗟に防御態勢をとるが、爆風と破片は防ぎきれずに後方へと吹き飛ばされる。

(俺とした事が、古典的な罠にっ!?)

 エイジはそのまま気を失った。