突然先輩が笑い出し、わけがわからなくて今度は私がぽかんと呆気に取られる。


「やっと宮本さんの素が見られた。さっきまでの作ったヘラヘラした笑顔なんかよりも、今みたいに無邪気に輝いてる笑顔の方が何倍も可愛いよ」

「か、かわ…っ!?からかわないでください!」


恥ずかしさや焦りが極限まで達して体が熱すぎて、思わず涙目になりながら先輩になんとか反論する。


「からかってないよ。本当に思っただけ」

「な…っ。カノジョがいる人がそういうのを他の女の子に言うなんてどうかと思います…!」


考えるよりも先に言葉が出てきて、自分の言葉に自分で傷つく。

こんなにかっこよくて誰にでも気が遣えて優しい人なんだから、カノジョがいないと一瞬でも思う方がおかしい。

どうして私はもっと早く、誰よりも先に先輩と出会うことができなかったんだろう…。


「…そうだよね。ごめん。思ったことそのまま言うの俺の悪い癖なんだ」


先輩は一瞬悲しそうに顔を歪めると、ぱっと笑顔を貼り付けて「そろそろ行こうか」と立ち上がった。


「…先輩」


こんなの、言いたいことも言えなくて周りの反応を伺うばかりの大人しいキャラである私らしくないのに、気づいたら先輩の腕を引いて形のいい唇に自分の唇を重ねていた。