「せ、先輩…っ!ダメですよ、みんな見てるのに…」

「もうどうでもいい!凛花以外からなんて思われようと、どうでもいいんだよ」

「え…?」


先輩は人気のない屋上前まで走ってくると、やっと手を離してくれた。


「朱莉と付き合ってたのは、周りからの期待に応える意味もあって好きでもないのに付き合っていたんだ。朱莉も本当は俺じゃなくて兄貴のことが好きで、振り向かせるために付き合ってた」

「…え?」

「周りが望むような“俺”を演じていたから、なんのために付き合ってるのかわからなくなっても別れることなんてできなかった。凛花と浮気をしたのもそんな自分から少しでも救われたいと思ったから。凛花の気持ちを利用したんだよ…」


じゃあ先輩は元々朱莉さんと好き同士で付き合ったのではなく、周りからの“幼なじみなんだから付き合うのは当たり前”といった期待に応えて、朱莉さんは本当に好きな相手である快斗さんに嫉妬でもいいから振り向いて欲しくて付き合っていた…?

だとしても浮気をしていたことには変わりなく、私がしてきたことは最低だ。


「でも、途中から凛花と一緒にいるだけで楽しくて幸せで、いつからか惹かれていることに気づいたんだ。他のことなんて、周りからどう思われようともうどうでもいいくらい凛花は俺にとって一番大切な存在になっていったんだ」


そっと輝星先輩が私の手を握ってきた。


「慌てる凛花も、怒って拗ねちゃう凛花も、恥ずかしさで泣きそうになる凛花も、無邪気に笑う凛花も全部好きだよ。俺に本当の恋を教えてくれたのは、ありのままの自分でいたいと初めて思えたのも全部凛花だけ。次こそ、俺の本当のカノジョになってください」