先輩のカノジョ

だけど、それももうやめなきゃ。


「私、もう先輩とは会いません。最初からこうするべきでした」

「…え?」


普段自分の気持ちを言えないくせに、先輩に対する気持ちだけは止められなくて最低な形で繋ぎ止めて。

これ以上優しい朱莉さんを、輝星先輩を傷つけることなんて私にはできない。

せめてまだカノジョのことを全然知らない私でいたら、この関係は今も続いていたかもしれない。

だけど朱莉さんを知ってしまい、優しさに触れて、私には絶対に敵うことができない相手だと知った。


「これ以上、先輩や朱莉さんの気持ちを無視できない。苦しいんです」


所詮私は、物語のヒロインとヒーローを見ていることだけしかできない。

最初は先輩の隣にいられるだけで幸せだと思っていたのに、もっともっとと欲張りになっていく自分が怖かった。

一番になんてなれるはずがないのに、勘違いをしてしまいそうになって苦しかった。


「ごめんなさい。私がしたことは本当に最低で最悪でした。だからもう…私のことなんて忘れてください。先輩は朱莉さんの隣にいてください」


何も言わない先輩に背を向けて、走り去る。

私に泣く資格なんてないのに、涙が溢れて止まらなくてすぐに前が見えなくなる。