先輩のカノジョ

「この前言っていたことなんですけど、あれってどういう意味で言ったんですか…?」

「え?この前?」


朱莉さんは少し考えるような素振りをしてから、すぐに思い出したのか「ああ」と小さく呟いた。


「そのままの意味だよ。私、割と鋭い方だからわかっちゃったんだけど、凛花ちゃんって輝星のことが好き…だよね?好きとまではいかなくても気にはなってるのかなって。意識してることが伝わってきたから、あの時思わず牽制するようなこと言っちゃった。でも今考えてみると、ちゃんと凛花ちゃんに聞いたわけじゃないのに勝手に気持ち決めつけて、あんなこと言って、気分悪くしたよね。ごめんね」


…ああ、やっぱり。私の気持ちは朱莉さんにバレてしまったんだ。


「もしも本当に凛花ちゃんが輝星のこと好きなら…」

「好きじゃ、ないです」

「…え?」


考えるよりも先に言葉が出ていた。


「本当は、初めて会った時にかっこいいなって思って、朱莉さんが言うように気になっていたんです。でも、カノジョがいるって知って、一気に気持ちが冷めたっていうか、この人は好きになっちゃいけない人だって考えて。だから、今は輝星先輩のことなんてなんとも思っていません」


うまい嘘のつき方は、嘘の中に本当のことを少し混ぜることだ。

初めて会った時にかっこいいなと思ったのは本当。カノジョがいると知って一度気持ちが冷めたのも本当。“この人は好きになっちゃいけない人だ”と考えたことだって本当。