先輩のカノジョ

「カノジョの、前園(まえぞの)朱莉」


朱莉さんはにこっと優しく私に向かって微笑んできた。


「輝星の知り合いならなおさら驚かせてごめんね。快斗って人との距離も近いから普通に怖かったよね」

「そんな人を変質者みたいに…。まあでも驚かせちゃったのはごめんね宮本さん。あ、そうだ。お詫びとは言ったらなんだけど、このあと輝星と飯行く予定だったから来る?朱莉も。俺が全部奢るよ」

「えっ、いやそんな…。驚きはしたけど全然気にしてないので…」

「え、ラッキー。凛花ちゃん、だっけ?ここはお言葉に甘えて奢ってもらおうよ」

「え、あの…」


有無を言わさない雰囲気の朱莉さんに腕を組まれ、すっかり乗り気の快斗さんの後をついていく。

輝星先輩に助けを求めようと振り返るけど、「ごめん」とジェスチャーで訴えてくるだけだった。



「はーうっまーい。凛花ちゃん、そのハンバーグとパスタ一口交換しよ!」

「あ、はい」


輝星先輩の隣で口いっぱいにパスタを頬張っていた朱莉さんが、切り分けたハンバーグをぱくっと口に入れると美味しそうに悶えていた。

朱莉さんたちに連れてこられたのは、イタリアンファミリーレストランだった。

そこで浮気相手、そのカノジョ、そのお兄さんといった地獄の組み合わせでご飯を食べていた。


快斗さんは私の三倍くらいの量をぺろりと平らげてしまい、今は食後のデザートまで食べている。