先輩のカノジョ

「…なんでだろうね。俺も初めて凛花と出会った時から、この子なら俺を変えてくれるかもってずっと思ってたんだ」

「…え?」


先輩はそっと片手を伸ばしてくると、私の頰を優しく包み込んできた。


「カノジョがいてもそれでも凛花を受け入れたのは俺。だから、一人で罪悪感を抱えることなんてないよ。俺たちは共犯。いつかこの関係がバレてしまう、その時までね」


どうして先輩がそんなに悲しそうに笑うのか、私にはわからなかった。


「…ごめん。俺、このあとはカノジョと一緒に帰るから。教室で待たせてるからもう行くね」

「あ…はい」

「またね」


ふとスマホを確認した先輩が私の頰に触れていた手をするりと解くと、振り返りもせずに廊下を歩いていってしまった。


友達以上恋人にはなれない関係。

それが今の私たちの関係だ。


せっかく近づけたと思った先輩の心はまた遠く離れてしまった。そんな気がした。