“他にも空いてる場所はたくさんありますよね!私の隣でわざわざ勉強なんてしなくてもいいんじゃないですか!?”

“そんなこと言われてもここは一年の頃からの俺の特等席だし。そんなに慌ててると誰かに怪しまれちゃうよ?”


むっと顔を上げると、絶対楽しんでいる様子の先輩がニヤニヤと笑っていて諦めて教科書に視線を落とす。

ここで席を変えるのも不自然でかえって目立ってしまうかも。

…どっちにしろ、ただ勉強をするだけなら“先輩と一緒に勉強をする”という夢のようなことまで叶えられちゃうんだ。

こんなチャンス逃すわけにはいかない…!


最初こそは身構えていたものの、勉強を始めてしまえば静かな図書館であちこちからシャーペンの走る音が聞こえてくるのが心地よくて、気づけば一時間くらいは隣にいる先輩の存在を忘れて勉強に没頭していた。


「…っ」


ふと、よそ見をしながら脇に置いていた消しゴムを取ろうとしたせいで、誤って机の下に落としてしまう。

手を伸ばしてみるけど奥まで転がってしまった消しゴムにはギリギリ届かない。

仕方がないから一回立ち上がってしゃがみ込み机の下に頭を入れて消しゴムに手を伸ばす。


「…へ」


すると、なぜか先輩までしゃがみ込んで机の下に入ってくるものだから、あまりの距離の近さに思わず声が漏れる。

先輩も何か落としたのかな?