「たまたま好きな漫画が一緒なんだ。ラウンドワン行った日もその話で盛り上がって。ね?」

「あ、そうなの…!」


動揺する私とは反対に、先輩は爽やかな笑顔一つで起点を利かせて質問に答えていた。さすがだ…。


「あ、そうなんだ〜。なんか親密に見えたからびっくりして。って、輝星先輩、カノジョいるのにそんなわけないか」

「輝星は浮気とかそんなことしないやつだよ。それに宮本さんだって真面目だろうし」

「あはは…」


“宮本凛花ならそんなことしない”

…一体誰が何の基準でそんなこと決めたんだろう?


こういう時の対処法はよくわかっている。

適当に笑っておけば大抵のことはいつも何とか流せていたから。

それに、周りの目を気にして反応を気にするようになってから、相手がこういう時はどういう言葉を求めているのかなんとなくわかるようになった。

私はそうやって身につけた力で毎日をやり過ごしてきたんだ。

たとえ自分の本当の気持ちとは正反対だったとしても、さも自分の気持ちかのように相手が欲しい言葉を吐く。

それが“私らしい”。


「…私はカノジョがいるような人を好きにはなれないよ」