「イリーシャの得意な属性は氷……だったよね」
「言ったっけ?」
「あ、シンイチさんから聞いたんだよ……」
「そう」
イリーシャが首を傾げて圭は慌ててフォローする。
今の発言は完全に回帰前の知識がポロリしてしまった。
ただイリーシャは圭に引き取られることが決まってから覚醒者等級検査を受けていた。
一応検査でも判明しているはずなので上手く誤魔化せた。
危ないところだった。
バレて何が悪いというところはあるけれども回帰前の知識があることは念の為に秘密にしている。
「氷なら……ここら辺かな?」
魔法の補助具でも得意な属性というものがあったりする。
満遍なく使えるものもあれば特化したものもあり、これもまたどれを選ぶか難しい。
得意属性で分類されているので氷向けの指輪を見ていく。
氷や水といった属性が得意なものは青色のものが多い。
赤よりも青色の方がイリーシャに合いそうなのでちょうどいい。
「どうだ? なんか気に入ったのあるか?」
「……分かんない。だから選んで」
「俺がか?」
「ん」
イリーシャは小さく頷く。
「あんまりこういうの得意じゃないんだけどな」
マサキは頭をかきながらどの指輪がいいか考える。
とはいっても店売りの装備品は基本的にあまり良いものとは言えない。
高いものになればそれなりだがゲートダンジョンで見つかる物や職人が作った一点物には敵わないのである。
あまり性能にこだわっても差がないのならサッと選んでしまうのが正解だ。
「派手なやつよりシンプルなやつの方が似合うかな」
マサキは青い石の指輪を手に取った。
リングが少し太めで丈夫そうなシンプルなデザインで普段から身につけてても大きな違和感なく溶け込むだろうと思った。
「これはどうだ?」
「ん」
イルージュは左手を差し出した。
手のひらを上ではなく手の甲を上にして。
「着けろって?」
「うん」
少し頬を赤くしてイルージュは手を差し出したまま頷く。
「うーんと……」
どの指に着けるべきか悩んだ。
流石のマサキでも左手の薬指に指輪を着ける意味は知っている。
「これでいいかな?」
仕方なく人差し指に着けることにした。
これが一番無難な気がしたのだ。
「…………これでいい」
ほんの少しイルージュが不満そうな目をしているけれどマサキはこれでいいという言葉に安心していた。
嫌だと言われなくてよかったとホッとしている。
魔法使いらしいローブも購入した。
中には軽い防具を身につける人もいるけれどローブの方が魔法効果を高めてくれる。
「末長くお幸せに〜そして爆発しろ」
会計を済ますと店員がボソリと何かを呟いたような気がするなとマサキは思った。
「とりあえずこんなところ……あっ」
「なに?」
「これで最後と思ってたけどもう一個買うものがあったな」
ーーーーー
「折りたたみテーブルぐらい買って持って帰ってくればよかったな。ごめん」
「ううん、こういうのも楽しいよ」
帰りにお弁当を買って帰ってきたのだが家には何もない。
当然テーブルすらなくて床で食べることになった。
布団は必要だから借りるということは考えていたけれどせめてテーブルぐらいあればよかったなと今更ながらに思った。
マサキ一人なら別に床で食べようと構わないがイリーシャに不便をかけてしまったなと思った。
ただイリーシャも別になんとも思ってない。
むしろ二人なら楽しいぐらいに感じている。
「ん? はーい」
家のインターホンが鳴らされた。
引っ越したばかりで訪ねてくるような人はいないはずと思いながら立ち上がったマサキはインターホンに備え付けられているカメラを確認する。
「マサキさん! 引っ越したと聞いたので!」
映っているのはレイであった。
レイには引っ越したことと住所は伝えてある。
前の家よりもレイの家に近くなったけれどまさか来てくれるのは思ってもなかった。
「よう。よく来てくれたな」
「まだ何もないでしょうから晩御飯持って……」
「誰?」
マサキがドアを開けるとレイは手に持った手提げカバンをマサキに見せた。
マサキに良いところを見せるチャンスだと思っていたらイリーシャがひょっこりと後ろから顔を覗かせた。
「……マサキさんが女の子連れ込んでるぅー!?」
「おい……近所の聞こえが悪いこと叫ぶな!」
引っ越したばかりで女の子連れ込むやつだなんて印象周りにもたれたくない。
マサキは慌ててレイを部屋に引き込む。
「こ、この子なんなんですか!」
レイにはまだイリーシャのことを伝えていなかった。
引っ越しを決めた時点ではまだイリーシャのことも確定ではなかったから折を見て伝えようと思っていた。
「落ち着け、レイ。ちゃんと説明するから……」
「ちゃんと! 説明してください!」
レイに詰め寄られてマサキはタジタジである。
その間にもイリーシャは冷静にお弁当を食べていた。
「深い訳があるんだ……」
マサキは順を追って何が起きたのかを説明した。
タナカたちに脅されたこと、それに伴って犯罪のにおいを嗅ぎつけて覚醒者協会に通報したこと、覚醒者協会に協力することになったこと、そしてイリーシャを助けたこと。
なんやかんやとあってマサキがイリーシャを引き取ることになった。
「言ったっけ?」
「あ、シンイチさんから聞いたんだよ……」
「そう」
イリーシャが首を傾げて圭は慌ててフォローする。
今の発言は完全に回帰前の知識がポロリしてしまった。
ただイリーシャは圭に引き取られることが決まってから覚醒者等級検査を受けていた。
一応検査でも判明しているはずなので上手く誤魔化せた。
危ないところだった。
バレて何が悪いというところはあるけれども回帰前の知識があることは念の為に秘密にしている。
「氷なら……ここら辺かな?」
魔法の補助具でも得意な属性というものがあったりする。
満遍なく使えるものもあれば特化したものもあり、これもまたどれを選ぶか難しい。
得意属性で分類されているので氷向けの指輪を見ていく。
氷や水といった属性が得意なものは青色のものが多い。
赤よりも青色の方がイリーシャに合いそうなのでちょうどいい。
「どうだ? なんか気に入ったのあるか?」
「……分かんない。だから選んで」
「俺がか?」
「ん」
イリーシャは小さく頷く。
「あんまりこういうの得意じゃないんだけどな」
マサキは頭をかきながらどの指輪がいいか考える。
とはいっても店売りの装備品は基本的にあまり良いものとは言えない。
高いものになればそれなりだがゲートダンジョンで見つかる物や職人が作った一点物には敵わないのである。
あまり性能にこだわっても差がないのならサッと選んでしまうのが正解だ。
「派手なやつよりシンプルなやつの方が似合うかな」
マサキは青い石の指輪を手に取った。
リングが少し太めで丈夫そうなシンプルなデザインで普段から身につけてても大きな違和感なく溶け込むだろうと思った。
「これはどうだ?」
「ん」
イルージュは左手を差し出した。
手のひらを上ではなく手の甲を上にして。
「着けろって?」
「うん」
少し頬を赤くしてイルージュは手を差し出したまま頷く。
「うーんと……」
どの指に着けるべきか悩んだ。
流石のマサキでも左手の薬指に指輪を着ける意味は知っている。
「これでいいかな?」
仕方なく人差し指に着けることにした。
これが一番無難な気がしたのだ。
「…………これでいい」
ほんの少しイルージュが不満そうな目をしているけれどマサキはこれでいいという言葉に安心していた。
嫌だと言われなくてよかったとホッとしている。
魔法使いらしいローブも購入した。
中には軽い防具を身につける人もいるけれどローブの方が魔法効果を高めてくれる。
「末長くお幸せに〜そして爆発しろ」
会計を済ますと店員がボソリと何かを呟いたような気がするなとマサキは思った。
「とりあえずこんなところ……あっ」
「なに?」
「これで最後と思ってたけどもう一個買うものがあったな」
ーーーーー
「折りたたみテーブルぐらい買って持って帰ってくればよかったな。ごめん」
「ううん、こういうのも楽しいよ」
帰りにお弁当を買って帰ってきたのだが家には何もない。
当然テーブルすらなくて床で食べることになった。
布団は必要だから借りるということは考えていたけれどせめてテーブルぐらいあればよかったなと今更ながらに思った。
マサキ一人なら別に床で食べようと構わないがイリーシャに不便をかけてしまったなと思った。
ただイリーシャも別になんとも思ってない。
むしろ二人なら楽しいぐらいに感じている。
「ん? はーい」
家のインターホンが鳴らされた。
引っ越したばかりで訪ねてくるような人はいないはずと思いながら立ち上がったマサキはインターホンに備え付けられているカメラを確認する。
「マサキさん! 引っ越したと聞いたので!」
映っているのはレイであった。
レイには引っ越したことと住所は伝えてある。
前の家よりもレイの家に近くなったけれどまさか来てくれるのは思ってもなかった。
「よう。よく来てくれたな」
「まだ何もないでしょうから晩御飯持って……」
「誰?」
マサキがドアを開けるとレイは手に持った手提げカバンをマサキに見せた。
マサキに良いところを見せるチャンスだと思っていたらイリーシャがひょっこりと後ろから顔を覗かせた。
「……マサキさんが女の子連れ込んでるぅー!?」
「おい……近所の聞こえが悪いこと叫ぶな!」
引っ越したばかりで女の子連れ込むやつだなんて印象周りにもたれたくない。
マサキは慌ててレイを部屋に引き込む。
「こ、この子なんなんですか!」
レイにはまだイリーシャのことを伝えていなかった。
引っ越しを決めた時点ではまだイリーシャのことも確定ではなかったから折を見て伝えようと思っていた。
「落ち着け、レイ。ちゃんと説明するから……」
「ちゃんと! 説明してください!」
レイに詰め寄られてマサキはタジタジである。
その間にもイリーシャは冷静にお弁当を食べていた。
「深い訳があるんだ……」
マサキは順を追って何が起きたのかを説明した。
タナカたちに脅されたこと、それに伴って犯罪のにおいを嗅ぎつけて覚醒者協会に通報したこと、覚醒者協会に協力することになったこと、そしてイリーシャを助けたこと。
なんやかんやとあってマサキがイリーシャを引き取ることになった。


