「彼は私のことを手助けしてくれたの。ちょっと困ってるみたいだから兄さんに力を貸してほしくて」
「妹の頼みなら断れないが……私何を?」
「雷神会という半グレ組織知ってますか?」
「雷神会……聞いたことがあるな」
マサキがバイトとして関わっていた組織は雷神会という名前だった。
本来この時期にマサキは雷神会というヤバい組織に関わっていることなど知らなかったのだが、回帰前はズルズルとバイトを続けさせられたので最終的にそうした組織だったと知った。
「雷神会が何かしようとしています」
「……何かとは?」
「それはまだ分かりませんが大きなことです」
「はぁ、それだけでは動けない。かもしれないだけで人を動かすことはできないんだ」
「経緯をお話しします……」
マサキは事の経緯を説明した。
元々怪しいバイトをしていたことと覚醒して足を洗ったこと、そしてまたタナカたちが現れて仕事を強要していったこと。
「半グレ組織がわざわざ抜けようとしている奴まで脅して覚醒者の頭数を集めている。何かするつもりじゃなきゃそんなことしないでしょう?」
「確かに怪しいな。しかし君をまた引き込むためにやったことかもしれない。なんにしても証拠が少なく人を動かすほどの情報とは言えないな」
シンイチは悩ましげに首を振った。
確かに怪しさはある話だ。
しかし怪しいだけで動くことはできない。
今時何をするのにもしっかりとした裏どりは必要になる。
動くのに値する何かは必要なのだ。
「ひとまず困っているようなら警察の方に相談するといい。覚醒者協会の方では現状動けない」
「やっぱりそうですよね……ん? …………じゃあこれならどうですか?」
「これ?」
「縦浜港の第三埠頭」
「……なんだと?」
「仕事の場所です」
分かっていたけど無理そうだなと諦めようとした時だった。
たまたまスマホに何かの通知が来てマサキは画面を見た。
思わずニヤリと笑ってしまう。
通知の内容はタナカからの仕事の指示に関するものだった。
仕事の時間と場所に関するもので、マサキは瞬間的に使えると思った。
「そこがどこか……分かっていますか?」
「むしろミカミさんの方がお分かりですよね?」
「少し話が変わってきましたね」
「そのなんちゃら埠頭がどうかしたの?」
「ニュースを見ないのか?」
「あまり見ないわ」
マサキとシンイチは縦浜港の第三埠頭という言葉で同じことを思い浮かべていた。
一方でカスミはなんのことか分かっていない。
「一ヶ月ほど前だ、とあるタレコミがあった。違法な取引が行われるっていうもので外国のマフィア組織が関わる大きな取引だということで警察と共同で捜査にあたったんだ。しかし直前に相手方に情報が漏れたらしくて逆に襲撃された」
シンイチは深いため息をついた。
「こちらは多くの死傷者を出して捕えられたのは相手の下っ端数人。取引も押さえられず大失敗に終わった。しかも失敗をマスコミにリークしやがった……警察も覚醒者協会も大激怒」
「その襲撃された場所が……」
「縦浜港、しかも第三埠頭がメインの戦場だった」
少し前に大きなニュースになっていたことはマサキの記憶にも新しい。
犯罪者を逃したことに対する批判や情報の管理体制に対する疑問の声が上がっていた。
「事件からまださほど時間も経っていないのに縦浜港で半グレが何かをする……」
より怪しさが増したとシンイチは運ばれてきたコーヒーの表面を見つめる。
ちょうど捜査による封鎖が終わった直後である。
マサキからもたらされた情報は無視するにはあまりにも疑わしい。
「…………一度協会まで来てくれないか? 私だけでは判断できない」
悩んだ末にシンイチはマサキの話を個人ではなく覚醒者協会の捜査課の捜査官として聞くことに決めた。
「これから時間はあるか?」
「もちろんです」
「では今から向かおう。ここは私が」
シンイチはまだ暑いはずのコーヒーを一気に飲み干すと伝票を手に立ち上がる。
マサキも慌てて跡を追う。
いきなりシンイチを呼び出したカスミといい行動が早い兄弟であるとマサキは思った。
「妹の頼みなら断れないが……私何を?」
「雷神会という半グレ組織知ってますか?」
「雷神会……聞いたことがあるな」
マサキがバイトとして関わっていた組織は雷神会という名前だった。
本来この時期にマサキは雷神会というヤバい組織に関わっていることなど知らなかったのだが、回帰前はズルズルとバイトを続けさせられたので最終的にそうした組織だったと知った。
「雷神会が何かしようとしています」
「……何かとは?」
「それはまだ分かりませんが大きなことです」
「はぁ、それだけでは動けない。かもしれないだけで人を動かすことはできないんだ」
「経緯をお話しします……」
マサキは事の経緯を説明した。
元々怪しいバイトをしていたことと覚醒して足を洗ったこと、そしてまたタナカたちが現れて仕事を強要していったこと。
「半グレ組織がわざわざ抜けようとしている奴まで脅して覚醒者の頭数を集めている。何かするつもりじゃなきゃそんなことしないでしょう?」
「確かに怪しいな。しかし君をまた引き込むためにやったことかもしれない。なんにしても証拠が少なく人を動かすほどの情報とは言えないな」
シンイチは悩ましげに首を振った。
確かに怪しさはある話だ。
しかし怪しいだけで動くことはできない。
今時何をするのにもしっかりとした裏どりは必要になる。
動くのに値する何かは必要なのだ。
「ひとまず困っているようなら警察の方に相談するといい。覚醒者協会の方では現状動けない」
「やっぱりそうですよね……ん? …………じゃあこれならどうですか?」
「これ?」
「縦浜港の第三埠頭」
「……なんだと?」
「仕事の場所です」
分かっていたけど無理そうだなと諦めようとした時だった。
たまたまスマホに何かの通知が来てマサキは画面を見た。
思わずニヤリと笑ってしまう。
通知の内容はタナカからの仕事の指示に関するものだった。
仕事の時間と場所に関するもので、マサキは瞬間的に使えると思った。
「そこがどこか……分かっていますか?」
「むしろミカミさんの方がお分かりですよね?」
「少し話が変わってきましたね」
「そのなんちゃら埠頭がどうかしたの?」
「ニュースを見ないのか?」
「あまり見ないわ」
マサキとシンイチは縦浜港の第三埠頭という言葉で同じことを思い浮かべていた。
一方でカスミはなんのことか分かっていない。
「一ヶ月ほど前だ、とあるタレコミがあった。違法な取引が行われるっていうもので外国のマフィア組織が関わる大きな取引だということで警察と共同で捜査にあたったんだ。しかし直前に相手方に情報が漏れたらしくて逆に襲撃された」
シンイチは深いため息をついた。
「こちらは多くの死傷者を出して捕えられたのは相手の下っ端数人。取引も押さえられず大失敗に終わった。しかも失敗をマスコミにリークしやがった……警察も覚醒者協会も大激怒」
「その襲撃された場所が……」
「縦浜港、しかも第三埠頭がメインの戦場だった」
少し前に大きなニュースになっていたことはマサキの記憶にも新しい。
犯罪者を逃したことに対する批判や情報の管理体制に対する疑問の声が上がっていた。
「事件からまださほど時間も経っていないのに縦浜港で半グレが何かをする……」
より怪しさが増したとシンイチは運ばれてきたコーヒーの表面を見つめる。
ちょうど捜査による封鎖が終わった直後である。
マサキからもたらされた情報は無視するにはあまりにも疑わしい。
「…………一度協会まで来てくれないか? 私だけでは判断できない」
悩んだ末にシンイチはマサキの話を個人ではなく覚醒者協会の捜査課の捜査官として聞くことに決めた。
「これから時間はあるか?」
「もちろんです」
「では今から向かおう。ここは私が」
シンイチはまだ暑いはずのコーヒーを一気に飲み干すと伝票を手に立ち上がる。
マサキも慌てて跡を追う。
いきなりシンイチを呼び出したカスミといい行動が早い兄弟であるとマサキは思った。


