「それで何かしら?」
「早速だな。デートの誘いかもしれないだろ?」
「あなたはもうすでに相手がいるでしょう?」
「残念ながらそういう関係じゃないよ」
「ふーん」
コーヒーを飲みながらカスミはマサキに疑いの視線を向けた。
マサキが倒れた時にはレイは泣きそうになっていた。
命に別状はないだろうと言われてホッとした顔をしていたし、その後もずっと病室で付き添っていた。
あれで付き合っていないのだとしたらマサキは鈍すぎるとカスミは思う。
「それにあなたは私の好みじゃないわ。もっとがっしりした人が好みなの」
「そりゃ残念だ」
マサキは肩をすくめる。
あまり残念そうに見えないのは少しムカつくなとカスミは目を細める。
自分も好みでないと先に断じてしまったのだしお互い様かと口には出さない。
マサキもカスミを口説くつもりはない。
好みでないことは知っていたし、呼び出した目的は口説くためではない。
「何の用で呼んだのかしら? 何もないならコーヒーだけ飲んで帰るわよ?」
「そう焦るなって」
今マサキはカスミを喫茶店に呼び出していた。
病院に見舞いに来てくれた時に連絡先を交換しておいたので直接連絡することができたのである。
用件を告げずに呼び出したマサキにカスミは少し警戒心をあらわにしていた。
「実は……人を紹介してほしいんだ」
「人?」
「警察、あるいは覚醒者協会の捜査課……」
「……あなた、私のことを調べたわね?」
穏やかだった空気が一変した。
カスミから魔力が漏れ出してマサキのことを押さえつける。
風もないのにコーヒーのカップがカタカタと揺れている。
「私そういうの嫌いなの。特に身内を調べられるなんて虫唾が走るわ」
「勘違いだ」
カスミの力に冷や汗が勝手に出てくるけれどマサキは平静を装って答える。
「何が勘違いなのかしら?」
「俺は知っていたら紹介してほしい、あるいは知っていそうな人を紹介してほしいと頼むつもりだったんだ。お前のことを調べてはいない。だが正義感が強いしそうした知り合いか知り合いの知り合いぐらいいないかなと思ったんだよ」
「…………それはごめんなさいね」
マサキの目を見つめてウソはなさそうだとカスミは力を抑える。
「人の話を聞きなさいって怒られたことはないか?」
マサキは額の汗を拭う。
現段階でもカスミの力はかなり強いようだ。
「小学校の頃言われたことはあるわね」
カスミは少しだけ申し訳なさそうな顔をする。
「今の反応するってことは身内に関係する人がいるんだな?」
「……そうね」
もちろん何もなくカスミに警察関係者を紹介してくれと言いに来たわけじゃない。
カスミのことは調べていない。
ただし回帰前にカスミについて話を聞いたことはあったのだ。
カスミの身内にそうした人がいるということは知っていたのである。
ただ調べていないことは事実だったので信じてくれたようで助かった。
回帰前も噂話を耳にしただけで積極的に知ろうとしたものでもなかったのだ。
「それにしても……あなた危ないことにでも首突っ込んでるの?」
「……そうなるかもしれない。誰にでも過ちの一つや二つあるだろ? 俺はそれを綺麗にしたいんだよ」
「普通に警察に行ったら?」
「普通に行っても話は聞いてもらえないだろ」
警察も暇ではない。
良い人にあたれば話も聞いてもらえるかもしれないが、まともに話を聞いてもらえない可能性も高い。
人の紹介ならば少なくとも話は聞いてくれるだろうとマサキは考えていた。
「倒れて病院に運ばれるほど頑張ったんだ。頼めないか?」
「ふぅ……」
そこを引き合いに出されると弱いとカスミは思う。
毒がある実を燃やすためにマサキはスキルを使って頑張ってくれた。
一方的な恩とまではいかないが多少の恩はあるだろうとカスミも感じている。
「分かったわ」
軽くため息をついてカスミはスマホを取り出した。
「もしもし、兄さん? そう、私よ。今少し時間ある?」
カスミはどこかに電話をかけ始めた。
少し眉をひそめながら会話を進めて今いる場所を伝えてサッと電話を切った。
「今のは?」
「少し待てば分かります。もう少し時間がかかりそうですね。パフェ頼んでいいですか?」
「……あ、ああ」
まさか今すぐはなんてことはないよなと思いながらもカスミならやりかねないとマサキは思った。
「カスミ!」
カスミが頼んだ意外と大きなパフェを食べていると静かな喫茶店にスーツの男性が入ってきた。
「兄さん」
「いきなり呼び出してどうした? …………こちらの方は?」
「やめて。別にそういうのじゃないから」
スーツの男性は笑顔でカスミに近づくと少し遅れてマサキのことに気がついた。
一瞬にして顔が険しくなって魔力が漏れ出す。
「座って」
ため息をつきながらカスミがスーツの男性を隣に座らせた。
「これが私の兄の三上信一(ミカミシンイチ)。覚醒者協会の捜査課に所属しているの」
「宇佐美将暉です。よろしくお願いします」
「よろしく……それで誰なんだ?」
いきなり呼び出されて男に合わせられた。
シンイチにしてみれば恋人でも紹介するつもりなのかと思ったがそんな雰囲気もなかった。
「早速だな。デートの誘いかもしれないだろ?」
「あなたはもうすでに相手がいるでしょう?」
「残念ながらそういう関係じゃないよ」
「ふーん」
コーヒーを飲みながらカスミはマサキに疑いの視線を向けた。
マサキが倒れた時にはレイは泣きそうになっていた。
命に別状はないだろうと言われてホッとした顔をしていたし、その後もずっと病室で付き添っていた。
あれで付き合っていないのだとしたらマサキは鈍すぎるとカスミは思う。
「それにあなたは私の好みじゃないわ。もっとがっしりした人が好みなの」
「そりゃ残念だ」
マサキは肩をすくめる。
あまり残念そうに見えないのは少しムカつくなとカスミは目を細める。
自分も好みでないと先に断じてしまったのだしお互い様かと口には出さない。
マサキもカスミを口説くつもりはない。
好みでないことは知っていたし、呼び出した目的は口説くためではない。
「何の用で呼んだのかしら? 何もないならコーヒーだけ飲んで帰るわよ?」
「そう焦るなって」
今マサキはカスミを喫茶店に呼び出していた。
病院に見舞いに来てくれた時に連絡先を交換しておいたので直接連絡することができたのである。
用件を告げずに呼び出したマサキにカスミは少し警戒心をあらわにしていた。
「実は……人を紹介してほしいんだ」
「人?」
「警察、あるいは覚醒者協会の捜査課……」
「……あなた、私のことを調べたわね?」
穏やかだった空気が一変した。
カスミから魔力が漏れ出してマサキのことを押さえつける。
風もないのにコーヒーのカップがカタカタと揺れている。
「私そういうの嫌いなの。特に身内を調べられるなんて虫唾が走るわ」
「勘違いだ」
カスミの力に冷や汗が勝手に出てくるけれどマサキは平静を装って答える。
「何が勘違いなのかしら?」
「俺は知っていたら紹介してほしい、あるいは知っていそうな人を紹介してほしいと頼むつもりだったんだ。お前のことを調べてはいない。だが正義感が強いしそうした知り合いか知り合いの知り合いぐらいいないかなと思ったんだよ」
「…………それはごめんなさいね」
マサキの目を見つめてウソはなさそうだとカスミは力を抑える。
「人の話を聞きなさいって怒られたことはないか?」
マサキは額の汗を拭う。
現段階でもカスミの力はかなり強いようだ。
「小学校の頃言われたことはあるわね」
カスミは少しだけ申し訳なさそうな顔をする。
「今の反応するってことは身内に関係する人がいるんだな?」
「……そうね」
もちろん何もなくカスミに警察関係者を紹介してくれと言いに来たわけじゃない。
カスミのことは調べていない。
ただし回帰前にカスミについて話を聞いたことはあったのだ。
カスミの身内にそうした人がいるということは知っていたのである。
ただ調べていないことは事実だったので信じてくれたようで助かった。
回帰前も噂話を耳にしただけで積極的に知ろうとしたものでもなかったのだ。
「それにしても……あなた危ないことにでも首突っ込んでるの?」
「……そうなるかもしれない。誰にでも過ちの一つや二つあるだろ? 俺はそれを綺麗にしたいんだよ」
「普通に警察に行ったら?」
「普通に行っても話は聞いてもらえないだろ」
警察も暇ではない。
良い人にあたれば話も聞いてもらえるかもしれないが、まともに話を聞いてもらえない可能性も高い。
人の紹介ならば少なくとも話は聞いてくれるだろうとマサキは考えていた。
「倒れて病院に運ばれるほど頑張ったんだ。頼めないか?」
「ふぅ……」
そこを引き合いに出されると弱いとカスミは思う。
毒がある実を燃やすためにマサキはスキルを使って頑張ってくれた。
一方的な恩とまではいかないが多少の恩はあるだろうとカスミも感じている。
「分かったわ」
軽くため息をついてカスミはスマホを取り出した。
「もしもし、兄さん? そう、私よ。今少し時間ある?」
カスミはどこかに電話をかけ始めた。
少し眉をひそめながら会話を進めて今いる場所を伝えてサッと電話を切った。
「今のは?」
「少し待てば分かります。もう少し時間がかかりそうですね。パフェ頼んでいいですか?」
「……あ、ああ」
まさか今すぐはなんてことはないよなと思いながらもカスミならやりかねないとマサキは思った。
「カスミ!」
カスミが頼んだ意外と大きなパフェを食べていると静かな喫茶店にスーツの男性が入ってきた。
「兄さん」
「いきなり呼び出してどうした? …………こちらの方は?」
「やめて。別にそういうのじゃないから」
スーツの男性は笑顔でカスミに近づくと少し遅れてマサキのことに気がついた。
一瞬にして顔が険しくなって魔力が漏れ出す。
「座って」
ため息をつきながらカスミがスーツの男性を隣に座らせた。
「これが私の兄の三上信一(ミカミシンイチ)。覚醒者協会の捜査課に所属しているの」
「宇佐美将暉です。よろしくお願いします」
「よろしく……それで誰なんだ?」
いきなり呼び出されて男に合わせられた。
シンイチにしてみれば恋人でも紹介するつもりなのかと思ったがそんな雰囲気もなかった。


