「まあ最優先の目的を果たしてからだな」
ただなんにしても優先すべきことを済ませてからの話である。
歩いていくと覚醒者とモンスターが戦う喧騒も小さくなっていく。
「よし、少し走ろう」
「あ、はい」
人の目があるところで奥に走り出すと続いてくる人もいるかもしれない。
モンスターと戦う覚醒者たちから自然な形で離れてきたので移動の速度を上げる。
「ゲートから見える山の間に向かっていく……あった!」
マサキたちがまっすぐ進んで行くと木々が開けた場所に出た。
真ん中には大きな木があって、手のひらほどの大きさの実が生っている。
「あれは……なんですか?」
「あれが今回の目的だ」
他にはまだ誰もこの木を見つけていない。
マサキはスタスタと木に近づいていき、レイはその後をついていく。
「何の実でしょうか?」
リンゴにも似た実で赤いものから青いものまで熟し度合いが違っていそうに見える。
「あれはな、食べると覚醒者の能力を強化してくれるんだ」
「えっ! 凄いものなんですね! これだけ食べたら……」
「ただし効果は最初に食べた実だけだぞ」
「あ、あはは〜そうですよね」
全部食べたら最強になれるのではないかとレイは思ったけれどそんなに都合良くはいかない。
覚醒者の能力を上げてくれる効果があるのは最初の1個のみで2個、3個と食べたところで効果はない。
「じゃあこの実を食べにきたんですか?」
「半分正解で半分外れ」
「ええ? どういうことですか?」
「この実を食べるつもりはあるけど……今じゃない」
「どうしてですか?」
他の人にも見つかる前に食べちゃえばいいのにと思うレイは不思議そうな表情を浮かべた。
見た目にも実は美味しそう。
熟しているものもありそうだし食べて強くなって貢献度を稼ぐチャンスである。
「実はこの実には毒があるんだ」
「えっ!?」
レイは興味本位で実に伸ばしかけていた手を慌てて引っ込めた。
そんな大事なこと先に言ってほしかったと少し怒りを込めて細い目でマサキを見る。
「手に取るだけなら平気だ。持っただけで冒されるような毒じゃないからな」
マサキも分かっていて毒があることを言うのを遅らせた。
予想していた通りのリアクションにクスリと笑いが漏れてしまう。
「食べたが最後……ゆっくりと苦しみながら死んでいくんだ。今のところ解毒薬もない」
「それってすっごく危なくないですか?」
「ああ、危険だ。だがその分効果はあるんだ。とりあえずいくつか熟しているやつを採るぞ」
マサキは手の届く範囲にある実を掴んだ。
「あれ? でもそれって……」
しかしマサキが採ったのは青い実であった。
レイは困惑する。
熟している実が欲しいのなら横に真っ赤になっているものもあるのにどうして熟していなさそうな青い硬い実を採ったのか。
レイの頭にクエスチョンマークが浮かんでいるのを見てマサキはふふっと笑う。
「こっちが熟している実なんだ」
一般的な常識で見れば赤くなってふっくらと見えている実の方が熟しているような雰囲気がある。
しかしこの実に関しては真逆であり、真っ赤な状態がまだ若い実で熟すほどに青くなっていって実自体も締まって小さめになる。
「へぇ〜」
常識で考えると痛い目を見ることもある。
熟していない赤い実でも効果はあるが熟したものよりも効果は薄く、さらに毒まで強いのだ。
「そこにあるやつ、手が届くか?」
「届きそうです」
レイと一緒にマサキは何個か青く熟した実を採取した。
それを背負ってきていたリュックの中に入れて、代わりに赤い魔石と小瓶を取り出した。
「今度は何をするつもりですか?」
毒である実を集めたと思ったら次は用途の分からない魔石を取り出した。
マサキのことは信頼しているし一々やることに口を出すつもりはないけれど説明ぐらいは欲しい。
「……危険だと思わないか? 多分このままここを去れば他のやつはこの木を見つける。ダンジョンにあるなら有益なものかもしれないと実を採って食べるはずだ」
「確かにそうですね」
「なら、誰も食べないように処理してしまわなきゃいけないと俺は思うんだ」
マサキは小瓶の蓋を開けて中に入っていた粉をサラサラと木の根元に撒き始める。
グルリと一周して粉で木を囲んだ。
「……俺の目的はこの実の犠牲者を出さないことなんだ」
そして赤い魔石を撒いた粉の上に置いた。
鞘を付けたままの剣を腰から取り外し、赤い魔石を殴りつけて叩き割った。
すると赤い魔石が発火して粉に引火する。
瞬く間に木も燃え上がっていく。
回帰前にこのダンジョンのことは遅れて有名になった。
有名になった理由はこの実の毒が原因であった。
同時期に色んな人が原因不明の病で動けなくなり、そのまま死んでいった。
のちに研究に回された実から覚醒者にとって毒となる成分が多く含まれていることが分かった。
そして毒成分が覚醒者を強化してくれるが代わりに体を蝕むような効果を持つことが判明するのだ。
最終的に毒神と呼ばれた覚醒者が解毒薬や実から毒の効果をなくして強化効果だけを残した強化薬を作り出したのである。
失われた人々が生きていたらどんな影響及ぼしたかはマサキには分からないが死ななくてもよかった人は多くいる。
強化も二の次の話で、毒の被害者を減らすことがマサキの目的であった。
ただなんにしても優先すべきことを済ませてからの話である。
歩いていくと覚醒者とモンスターが戦う喧騒も小さくなっていく。
「よし、少し走ろう」
「あ、はい」
人の目があるところで奥に走り出すと続いてくる人もいるかもしれない。
モンスターと戦う覚醒者たちから自然な形で離れてきたので移動の速度を上げる。
「ゲートから見える山の間に向かっていく……あった!」
マサキたちがまっすぐ進んで行くと木々が開けた場所に出た。
真ん中には大きな木があって、手のひらほどの大きさの実が生っている。
「あれは……なんですか?」
「あれが今回の目的だ」
他にはまだ誰もこの木を見つけていない。
マサキはスタスタと木に近づいていき、レイはその後をついていく。
「何の実でしょうか?」
リンゴにも似た実で赤いものから青いものまで熟し度合いが違っていそうに見える。
「あれはな、食べると覚醒者の能力を強化してくれるんだ」
「えっ! 凄いものなんですね! これだけ食べたら……」
「ただし効果は最初に食べた実だけだぞ」
「あ、あはは〜そうですよね」
全部食べたら最強になれるのではないかとレイは思ったけれどそんなに都合良くはいかない。
覚醒者の能力を上げてくれる効果があるのは最初の1個のみで2個、3個と食べたところで効果はない。
「じゃあこの実を食べにきたんですか?」
「半分正解で半分外れ」
「ええ? どういうことですか?」
「この実を食べるつもりはあるけど……今じゃない」
「どうしてですか?」
他の人にも見つかる前に食べちゃえばいいのにと思うレイは不思議そうな表情を浮かべた。
見た目にも実は美味しそう。
熟しているものもありそうだし食べて強くなって貢献度を稼ぐチャンスである。
「実はこの実には毒があるんだ」
「えっ!?」
レイは興味本位で実に伸ばしかけていた手を慌てて引っ込めた。
そんな大事なこと先に言ってほしかったと少し怒りを込めて細い目でマサキを見る。
「手に取るだけなら平気だ。持っただけで冒されるような毒じゃないからな」
マサキも分かっていて毒があることを言うのを遅らせた。
予想していた通りのリアクションにクスリと笑いが漏れてしまう。
「食べたが最後……ゆっくりと苦しみながら死んでいくんだ。今のところ解毒薬もない」
「それってすっごく危なくないですか?」
「ああ、危険だ。だがその分効果はあるんだ。とりあえずいくつか熟しているやつを採るぞ」
マサキは手の届く範囲にある実を掴んだ。
「あれ? でもそれって……」
しかしマサキが採ったのは青い実であった。
レイは困惑する。
熟している実が欲しいのなら横に真っ赤になっているものもあるのにどうして熟していなさそうな青い硬い実を採ったのか。
レイの頭にクエスチョンマークが浮かんでいるのを見てマサキはふふっと笑う。
「こっちが熟している実なんだ」
一般的な常識で見れば赤くなってふっくらと見えている実の方が熟しているような雰囲気がある。
しかしこの実に関しては真逆であり、真っ赤な状態がまだ若い実で熟すほどに青くなっていって実自体も締まって小さめになる。
「へぇ〜」
常識で考えると痛い目を見ることもある。
熟していない赤い実でも効果はあるが熟したものよりも効果は薄く、さらに毒まで強いのだ。
「そこにあるやつ、手が届くか?」
「届きそうです」
レイと一緒にマサキは何個か青く熟した実を採取した。
それを背負ってきていたリュックの中に入れて、代わりに赤い魔石と小瓶を取り出した。
「今度は何をするつもりですか?」
毒である実を集めたと思ったら次は用途の分からない魔石を取り出した。
マサキのことは信頼しているし一々やることに口を出すつもりはないけれど説明ぐらいは欲しい。
「……危険だと思わないか? 多分このままここを去れば他のやつはこの木を見つける。ダンジョンにあるなら有益なものかもしれないと実を採って食べるはずだ」
「確かにそうですね」
「なら、誰も食べないように処理してしまわなきゃいけないと俺は思うんだ」
マサキは小瓶の蓋を開けて中に入っていた粉をサラサラと木の根元に撒き始める。
グルリと一周して粉で木を囲んだ。
「……俺の目的はこの実の犠牲者を出さないことなんだ」
そして赤い魔石を撒いた粉の上に置いた。
鞘を付けたままの剣を腰から取り外し、赤い魔石を殴りつけて叩き割った。
すると赤い魔石が発火して粉に引火する。
瞬く間に木も燃え上がっていく。
回帰前にこのダンジョンのことは遅れて有名になった。
有名になった理由はこの実の毒が原因であった。
同時期に色んな人が原因不明の病で動けなくなり、そのまま死んでいった。
のちに研究に回された実から覚醒者にとって毒となる成分が多く含まれていることが分かった。
そして毒成分が覚醒者を強化してくれるが代わりに体を蝕むような効果を持つことが判明するのだ。
最終的に毒神と呼ばれた覚醒者が解毒薬や実から毒の効果をなくして強化効果だけを残した強化薬を作り出したのである。
失われた人々が生きていたらどんな影響及ぼしたかはマサキには分からないが死ななくてもよかった人は多くいる。
強化も二の次の話で、毒の被害者を減らすことがマサキの目的であった。


