回帰して出来ることは神様が推している人を探して育てるということだけではない。
 回帰前の世の中にも色々なことがあり、将来のために利用できそうなことはたくさんある。

「今回は仮面無しなんですね」

「今回の攻略は他の人もいるからな。撮影はしないで普通に攻略するよ」

 他にも何回かゲートダンジョンの攻略をした。
 その時も動画を撮影はしたのだけどまだ編集出来ておらず公開はしていない。

 レイも大学でパソコンを使う以上はどうしても作業時間も限られてしまう。
 作業が出来ないような時間にはスマホを使って情報収集を行なっていた。

 回帰前の記憶はあるけれど、この時期のマサキはあまり真っ当な感じで生きていたとは言えない。
 田中に怯えてくだらないバイトという搾取を続けられていた。

 この時期の覚醒者に関わる情報は記憶に薄かった。
 だから何かなかったかと調べた。

 それに神様の推しについてももっと集めたい。
 実際に生で配信できるようになるまでに何人か集めてチームにしたい。

 神様に言われた塩谷康成という人もいないかとスマホで名前を検索してみたがヒットは無し。
 他のリストの人たちも探してはみたものの近場にいそうな人は見当たらなかった。

 そんな時に覚醒者協会で覚醒者を集めているという話を見つけた。
 都心近くにある大きな公園にゲートダンジョンが出現したもので入り口となるゲートそのものが大きく、ゲートダンジョンの規模も大きかった。

 マサキは他の人がいるゲートダンジョンはあまり攻略する気がなかったのだがゲートダンジョンが出現した場所を見て回帰前のことを思い出した。
 このゲートダンジョンには参加しなきゃいけないと思った。

 すぐにマサキは参加条件などを確認した。
 特に参加に条件はなく、覚醒者であれば誰でも参加可能であった。

 マサキはレイにも相談して予定を空けてもらってゲートダンジョンの攻略に来ていたのであった。

「他の人もいるの緊張しますね……」

「これまでとそんなに変わらないよ。気負わずやればレイなら大丈夫さ」

 ゲートダンジョン近くの公園にはすでに多くの覚醒者が集まっていた。
 今回は他の人もいるということで撮影するつもりはなく、仮面もつけていない。

 チャンスがあれば撮影するかもしれないけれど今はバレるリスクの方が高いのでやらない。
 スマホで先に参加申請はしてあるので臨時で設けられている受付で覚醒者証を見せて登録を完了させる。

 他の覚醒者たちに比べるとマサキたちは軽装である。
 ゲートダンジョンで倒したモンスター素材を換金したもので少し防具も整えたけれどそれでもやはり貧弱感はある。

「一緒にやりませんか? タンク募集です!」

「Eランク以上の覚醒者大募集でーす」

 今回の攻略には広く覚醒者が募集されている。
 チームだけではなく個人で参加している人もおおくて公園ではそこら中から一緒に行動する覚醒者を募集する声が聞こえてくる。

 ゲートダンジョンの中では何があるか分からない。
 リスクを下げるためには他の覚醒者と固まって行動するのは理にかなっている。

「お姉さん1人? どう、俺たちと行動しない?」

「こっちは空きあるよ。他にも女の子いるしどうだい」

 ランクは分からなくても美人というだけでレイは人気である。
 普段は地味な格好をしているが、覚醒者として活動するときは動きやすさを重視してメガネなども着けずに前髪を上げている。

 ちなみに普段着けているメガネは伊達メガネらしい。
 レイをチームに引き込もうと色々な男がレイに声をかけてくる。

 一緒にいるマサキのことは目に入らんのかと思うが実際ほとんど目に入っていない。

「ごめんなさい」

 レイはそうしたお誘いに困ったような表情を浮かべながら断りを入れていく。
 そして一歩マサキに近寄るとそこまでしてようやくマサキが一緒なのだと気がつく。

 彼氏持ちかよ、と悪態をついて離れていく様を見ると目的は分かりきっている。

「ごめんなさい……」

「いいさ。悪いのはレイじゃない」
 
 マサキが悪態をつかれるだけで男避けになるのなら喜んでそうする。
 安全に攻略するならどこかのチームに身を寄せる方がいいのだけどマサキにも目的がある。

 そのためには誰かと行動するのは都合が悪かった。

「そろそろ攻略のお時間でーす!」

 何となくそれぞれ覚醒者たちの集まりもできた。
 覚醒者協会の人について行くと青く渦巻くように見えるゲートが見えてきた。

 ゲートの前にはすでに他の覚醒者もいた。
 公園の方にいたのはソロで活動していたり少数チームで動いている覚醒者で、ゲートの方にいた覚醒者はギルドと言われる覚醒者が集まった会社のようなものに所属している人たちになる。
 
 軽く見た感じでは以前レイをスカウトしたスターワンギルドのアサヤマなんかはいない。
 ゲートダンジョンのランクもそれほど高くないし有名な大型ギルドはいないようである。

「誰か探してるんですか?」

 マサキはキョロキョロと人の顔を確認している。

「いや、有名人でもいないかなと思って」

 誰か探しているというのでも間違いではない。
 ただ特定の誰かを探しているのではない。

 マサキは回帰前の知識を動員して知っている人はいないかと見ていたのである。