「決めますからー!」

 レイはほんのりと赤くなった頬を撫でながら並べられた剣に向き合う。

「どんなのがいいんですかね?」

 いざ剣を見てもどんなものがいいのかレイには全く分からない。
 初心者なのでしょうがないとマサキは思う。

 マサキだって初めての時は何も分からなかったものである。

「基本的には何でもいい」

 レイならば何でもいい。
 それは考えることを放棄したのでもなく、レイだからこそ。

 レイは覚醒者としての能力が高い。
 多少重たい剣だろうとレイならば容易く振り回せるし、取り回しのしやすい軽い剣でも十分に能力を活かすことが出来る。

 だから本当に好みでいいのだ。
 柄の握りやすさや好きな重さの剣であれば後は値段の問題である。

「とりあえずに手に取ってみたらいい」

 何はともあれ手に持たないことには分からないだろう。
 安い剣は見た目もそんなに大きく変わらないのでやはり手に馴染むかどうかしかない。

「意外と剣って重たいんですね」

 レイは何本か剣を手に取ってみる。
 剣というものの重心を分かっていなくてフラついたりして最初は危なっかしかったが持つだけならすぐに慣れた。

「うーん、これですかね?」

「……レイ」

「な、なんでそんな怖い顔してるんですか?」

「こっちだろ?」

 レイが今手に取っているのは並べられた安い剣の中でもさらに安いものである。
 しかしマサキはちゃんと見ていた。

 レイが持ってみた時にこれかなって表情をしていたのは違う剣であった。
 それは安い剣の中ではやや高めな剣だった。

 細身の刃で持ち手も細くて女性のレイでも軽くて持ちやすい。
 マサキがその剣を取ってレイの持っているものと交換する。

 レイは驚いたようにマサキを見た。

「い、いいんですか?」

「いいって」

 マサキは優しく微笑む。

「稼げるようになったらすぐにもっと良いもんにするから大丈夫だよ」

「ありがとうございます……」

 頬を赤らめてレイは嬉しそうに笑顔を浮かべる。

「俺はこれでいいかな」

 安い剣ではあるがレイの持っていたものも悪くはない。
 マサキこそどんな剣でも構わない。

 ある程度切れさえすればいいからそのままレイが選ぼうとした剣を自分の剣にすることにした。
 鞘は付いているのであとは剣を腰に下げるためのベルトも一緒に購入した。

「末永く爆発……ご購入ありがとうございました〜」

 傍目から見ればマサキとレイがイチャつきながら剣を選んでいたようにしか見えない。
 一応接客だとマサキたちの後ろで笑顔で待っていたけれどマサキが気を回して選んでしまったので出番もなかった。

 顔は営業スマイルだったが最後に堪え切れずに本音が若干漏れてしまった。
 サービスで剣にカバーも付けてもらってマサキたちはお店を出た。

「さてと……次は」

「まだ何かあるんですか?」

「うん。あれば買おうと思ってたものがあるんだけどあそこのお店にはなくてね」

 マサキは商業施設の店内図を眺めながら目的のものがどこにありそうか考える。

「何を探しているんですか?」

 店内図を眺めている時間が長い。
 なかなか目的のものがどこに売っているのか分からないようで悩んでいた。
 
 何を探しているんだろうとレイは首を傾げた。

「んーとな」

 マサキは探しているものをレイに伝えた。

「……そんなものが欲しいんですか?」

 聞いてもなおレイはそれを何に使うか分からない。

「置いてそうなところ……」

 レイもあごに手を当てて店内図を睨みつけるように眺める。

「むむむむ……ここですかね?」

「あるかな?」

「パーティーグッズとか簡単な仮装のものとかあるのであるんじゃないですかね?」