魔物の名付け方にも種類がある。
 古代語に由来するものもあれば見た目や体の特徴からつけたものもある。

 他には見つけられた場所や見つけた人、魔物そのものが持つ能力から名付けられたというモンスターも存在していた。
 ショックシープはシープという見た目に加えてショックという能力の二つから名前が付けられている。

「ショックシープは雷属性の力を持つ魔物なんだ」

 ショックというのはショックシープが持つ雷属性の能力に由来していた。

「あのモコモコの毛はただあったかそうに見えるけど、それだけじゃないんだ。あのモコモコの毛には常に雷属性の魔力がこもっていて電気が流れてるんだ」

 触れるもの全てに電撃を返す。
 電撃を食らうと衝撃を受けたようなショックがあるとしてショックシープなのである。

 ミツナも冒険者として活動をしていた。
 依頼を受けた時にもショックシープという魔物に対して特に疑問も持っていないようだった。

 だからエイルもショックシープについて説明しなかった。
 知っていて戦うことにも問題はないのたまろうと思っていたのである。

 けれどミツナはショックシープについて知らずショックシープの能力はミツナのスキルでも無効化しきれなかったようだ。

「痛くはないけど……体変な感じ……」

 電撃による痛みは感じないけれど電撃による体の痺れは防げない。
 痺れてしまってミツナは動けなくなってしまっていたのである。

「ミツナならいけるかなと思ったけど流石に無理だったな」

 痛みを感じない能力を過信しすぎてもいけない。

「だ、大丈夫! 私も戦える!」

 失望されてしまったかもしれない。
 そんな風に思ったミツナは慌てる。

「うん、そうだね。戦える方法を探していこう」

 別にこんなことぐらいでエイルはミツナに失望したり見捨てることはない。

「とりあえずあいつにトドメを刺そう」

「……あれはどうやって倒したの?」

「投げナイフさ」

 エイルの腰には簡単に抜けるようになっている小型のナイフが数本差してある。
 接近戦闘に使うのにも少し厳しいぐらいのサイズの小さいナイフは投擲用のものであった。

「投げナイフもできるんだ……」

 なんでもできるのだなと感心してしまう。

「狙ったところに百発百中の一流とはいかないけど相手に当てるぐらいならできるんだ」

 投げナイフもヒーラーの師匠である人から叩き込まれた技術の一つであった。
 ショックシープはエイルのヒールを受けて激痛に気絶していた。

 ナイフがかすめたようなダメージでは死ぬまでは至らなかったようである。
 近づいてみるとモコモコの白い毛からバチバチと音が鳴っているのが聞こえる。

 気を失っていても毛の中にある雷属性の力は無くなっていないようであった。

「よいしょ」

 雷属性の力によって痺れてしまうのは毛の部分だけとなる。
 つまり毛を避ければショックシープに触れても問題ないのだ。

 エイルはショックシープの首にナイフを突き立ててトドメを刺す。
 ショックシープは一度カッと目を見開いたが首から血が大量に流れ出てそのまま死んでしまった。

「とりあえずこれで一体だな」

「それは何?」

「これか? これは魔物を収納する袋だよ」

 死んだら毛の電気も無くなった。
 エイルが荷物から袋を取り出すとミツナは何をするのかと首を傾げた。

 エイルが取り出したのは魔物を持ち帰るための収納袋である。
 ショックシープも大型の魔物とはいえないがそれでも簡単に持っていけないような大きさである。

 討伐依頼では複数倒して持っていかねばならないが、倒すたびに町に魔物を持っていくなど面倒である。
 そこで魔物を収納しておくための袋があった。

 空間魔法という特殊な魔法によって袋は見た目よりも中がはるかに大きくなっている。
 収納袋の中に魔物を入れておけば一々町に持ち帰らずともよいのだ。

「……使ったことない?」

「……うん」

「うーん、最初に説明されると思うんだけどな。まあ……雑な仕事するギルドの人もいるからな」

 収納袋は買うこともできる。
 しかし空間魔法を扱える人は特殊なスキルを必要とするために収納袋は貴重な品物となっているために買おうと思うと非常に高価なのだ。

 普通には買えないぐらいの値段である。
 ただやはり収納袋がないと討伐などがとても不便。

 なので冒険者ギルドでは収納袋のレンタルを行っていた。
 無くしたら奴隷行きぐらいのすごい金額を取られることになるが比較的安価で収納袋を利用することができるのだ。

 エイルも討伐を行うので収納袋をレンタルしてきていた。
 こうしたシステムは冒険者として登録する時に説明されるのであるがミツナはそうした説明を受けた記憶がなかった。

 神迷の獣人が故に軽んじられたのだがエイルはそういうこともあるよねと困ったような笑顔を浮かべた。

「知らないことはこれから知っていけばいい。分かんないことがあったらなんでも聞いてよ」

「……ありがとう」