ここはスイラジュンムの、遥か北東部に位置する孤島。辺りは、人っ子一人いる気配もないような辺境の地。
 その孤島の北西部に位置する険しい山々の山頂付近には、西洋の城を思わせるこの地に似つかわしくないような建物が立っている。
 その建物内は広く迷ってしまうほどだ。そうここは、ヴァンディロードの屋敷である。

 現在ヴァンディロードは、自室のソファに座り葡萄酒のような色と味のするグルン酒を飲みながら考えていた。

 (ドラギドラス……いや、ドラバルト様があの洞窟から居なくなった。それもミスズとか云う異世界から召喚された勇者と共に、忽然と消息が途絶える。
 気になり他の使い魔にマグドラスの所へ向かわせたが……。
 ミスズがドラバルト様にかけられた術を解いたうえに、洞窟の封印をも解除するとは……。
 それもドラバルト様は、術を解く際にその影響でミスズのしもべとなっている。うむ、そういえばミスズはスイクラムを恨んでいたな。これは……面白い)

 そう考えるとグルン酒を口に含みその余韻に浸っている。

 (……そうだな。ドラバルト様は、確か竜人の里に向かったと言っていた。そうなると、何もなければ既に着いているはず。このことを一応、ヴァウロイに連絡しておくか)

 そう思い左腕にはめている腕輪の黒い石に人差し指と中指を添え小さく魔法陣を描いた。その後、ヴァウロイへと繋いだ。
 そしてヴァンディロードは、数分間ヴァウロイの返答を待つが何も返ってこない。

 「……何をやっておるのだ?」

 そう言い少しの間、ヴァウロイを待っていた。


 ――場所は、エリュード達の船の中に移る――

 ここは船室。エリュード達は、ここで話をしていた。
 因みに船の操縦は、専属を二人雇っていて交代で行っている。

 現在ヴァウロイは、エリュード達と話している途中で腕輪が発光したため慌てていた。

 「あーえっと……ご主人様から連絡なのニャ。だから別の所で話してくるニャ」
 「ヴァウロイ、なんでここじゃ駄目なんだ?」

 そう言いエリュードは、ヴァウロイを凝視する。

 「……前も言ったけど、まだ許可をもらっていないから無理なのニャ」
 「なるほど……いつ許可がもらえる?」
 「そんなの分からないのニャ」

 ヴァウロイはそう言い船室を出て別の所に向かった。

 「だけど、本当にヴァウロイのご主人様って誰なのかしら」
 「そうだな……魔族やそれに加担していたヤツが今、残っているっていうと」
 「エリュード……オレの勘だが、ヴァンディロードあたりじゃねぇのか」

 ――鋭い……。

 「んー……それはあり得るな。ヴァンディロードは警戒心が強い。そのため力があっても、自ら表舞台にでないヤツだ。まあ頭がいいんだろうがな」
 「そうね。でも、そうとも限らないわ。他にも、魔族以外に魔王を崇拝している者はいるから」
 「ああ、そうだな。とにかく用心はしておこう。ヤツラにいいように利用されないように」

 そうエリュードが言うとゴルイドとライルは、コクッと頷く。
 そしてその後もエリュード達は、ヴァウロイが戻ってくるまで話をしていた。