「ミスズ……悪かった。そうだな……確かにお前の気持ちも考えずに、オレは……」

 そう言いドラバルトは美鈴をみたあと頭を地面につけた。

 「まさか……お前が、頭を下げるとは」

 モドルグはそう言い驚いている。そう人に頭を下げているドラバルトをみたことがなかったからだ。

 「分かればいいよ。それでモドルグは、どうなの?」

 そう言い美鈴は、モドルグを凝視した。

 「そうですね。ミスズ様のことを好きなのは事実……ですが嫌われたくない。申し訳ありませんでした……ですので私も貴女の下僕にしてください」

 モドルグはそう言うと訴えかけるような目で美鈴をみる。

 「あーえっと……そういわれても、ねぇ」

 美鈴はどうしたらいいか戸惑いミィレインの方をみた。

 「別にいいんじゃニャい? それに、これってアタシが決めることじゃニャいわよ」
 「そうだけど……」

 どうしていいか分からず美鈴は混乱する。

 「モドルグ、お前が僕になるのは反対だ!」
 「フンッ、ドラバルト。ミスズ様の僕になれるのはお前だけだと思うなよ!」

 そう言いモドルグは、ドラバルトを睨みつけた。

 「お前たちいい加減にしろっ!! いや……モドルグ、なぜそんなにミスズにこだわる?」
 「お前……ファルスと云ったか?」
 「ああ、そうだ。それがどうした?」

 それを聞きモドルグは、ジーっとファルスをみる。

 「いや、どうもしない。ただ、気になっただけだ。それに……お前から神の匂いがする」
 「…………話をすり替える気か?」
 「そのつもりはない。ずっと気になっていたから聞いただけだ」

 そう言われファルスはモドルグが何を言いたいのか分からず困惑した。

 「言わなきゃいけないのか?」
 「それは自由だが……それに人間にしては強いと思ってな」
 「なるほど……まあ、このぐらいならいいだろう。確かに昔は、女神を崇めていた。だが……それだけだ」

 それを聞きモドルグは、すんなり納得する。

 「それで……そういう事か。じゃあ次は私の番。こだわる訳は……好きと云う理由とミスズ様であれば、この世界を変えてくれる……そんな気がするからだ」
 「ミスズが世界を変えるか……確かに可能かもしれんな」
 「……本気か? そもそも、この世界は女神スイクラムが創った世界だ」

 そう言いファルスは美鈴へ視線を向けた。

 「ウチが……いやいや、それはあり得ないでしょっ!」
 「それは分からニャいわよ。ミスズは間違いニャく真の勇者だと思うの……その証拠にアタシが、ここに居る」
 「なるほど……そういう仕組みか。真の勇者のみに水の守護精霊が発現する」

 ファルスはそう言い思考を巡らせる。

 (益々分からん。なぜ真の勇者を見誤った? よく確認しなかったとしか思えぬ)

 そう思いファルスは天井の一点をみた。

 「そういう事。ですので、ミスズ様が女神側にも魔王側にもつかないと判断したのなら……この世界を変えるしかありませんよね?」
 「そんなことができるの? ウチにそんなことが……」
 「ええ、可能なはずです……貴方が望むのであれば」

 そう言われ美鈴は戸惑っている。

 「それは面白そうだ。それが可能であれば、テルマ様の望みも叶う……」
 「そうか……魔王テルマは…………そういう事だったのか」
 「ああ、道を誤ったと言っておられた……進む方向をな」

 その話を聞き美鈴は複雑な気持ちになっていた。