美鈴の話をモドルグは聞いていたが、ふと疑問に思った。

 「……その話が本当だとして、なぜスイクラム様はそれほどまでに勇者を召喚したのでしょう?」
 「沢山召喚してた理由は、自分の好みに合う勇者をみつけてたみたい。ただ召喚された他の人は、元の世界に戻してもらえたらしいけどね」
 「だが……ミスズ様だけが、ダサくて女と云うだけで殺されそうになった。それも何度も……」

 そう言いモドルグは思考を巡らせる。

 「うん……だけどね。最初は、ヴァウロイとエリュードに助けてもらった。二度目はドラバルトで、三度目がファルスに……」
 「ドラバルトがミスズ様を助けた? 待ってください……そんなことあり得ませんっ!」
 「なんでそう思うの? ウチはあの時、ドラバルトが居なければ……本当に死んでいたかも。ううん……運よく居た洞窟に転送されたお陰もあるけどね」

 それを聞くもモドルグは、納得いかないでいた。

 「……もしそうだとして、なぜドラバルトがミスズ様を……」
 「なぜかは分からない。自分が助かりたかったからかもしれないし……」
 「そういえば、ドラバルトは別の姿に変えられていたと言っていましたね?」

 そう問われ美鈴は、コクッと頷く。

 「その姿にならないように完全に術を、ウチが解除した。まあ、そのせいでドラバルトは……ウチの下僕になっちゃったんだけどね」

 それを聞いたモドルグは、驚き仰け反る。

 「あ、あり得ない……あのプライドの塊のような男が……。いくら変えられた姿が嫌だったとしても、下僕になってまで元に戻ろうとするのでしょうか」
 「でも、戻るためならウチの下僕になっても構わない……そう言ってくれた」
 「それが本当ならば……今のドラバルトは、魔王と何の関係もない」

 そう言いながらもモドルグは戸惑っていた。

 「うん、多分そうなると思う。でも、女神側って訳じゃないよ」
 「なるほど……そうなると、ミスズ様がどっちに付くかでドラバルトは……」

 モドルグはそう言うと、ニヤリと笑みを浮かべる。

 「ちょ、待って……何を考えてるの?」
 「決まっていますよ。これは何がなんでも、ミスズ様にコッチについて頂かねばと」
 「だから、ウチはどっちにもつかないって言ってるでしょっ!」

 そう言い美鈴は、モドルグを睨んだ。

 「それで、威嚇しているおつもりか? 召喚された勇者だとて、やはり女性ですね……可愛らしい」
 「馬鹿にしているの?」
 「いえ、そんなつもりはありません。ただ、ミスズ様には戦闘など似合わないと思っただけですよ」

 モドルグはそう言いながら美鈴に近寄ろうとした。
 するとそれをみていたミィレインは、美鈴の前までくる。その後、即座に水の壁を目の前に張った。

 「水の守護精霊か……それが現れているという事は、勇者に近い存在。やはり、ほっとけませんね」
 「それって、どういう事? もしかして……ミィレイン、知ってたの?」
 「そうねぇ……でもミスズは、それを望んでいニャいみたいだったから……敢えて言わニャかったのよ」

 それを聞き美鈴は戸惑う。

 「なるほど……知らなかったようですね。ですが、スイクラム様は……気づいていないのでしょうか?」
 「どうだろう……もし気づいていたら、更に狙ってくるかもしれない」
 「そうだとすれば、スイクラム様は余程ミスズ様のことを嫌っているという事ですね。でも、信じられません……どうしても」

 そう言いモドルグは、更に分からなくなり混乱する。
 そしてその後も美鈴とモドルグとミィレインは、結論が出るまで話をしていたのだった。