ここはこの世界の南西部にあるカーカイル大陸。この大陸の西側に大きな湖があって、その真ん中にオルパイルの町はある。
そして人口は約一千万人いると云われているが、実際どうだか定かではない。
この町の庭園では、男女が長椅子に座り話をしていた。
男の方はどうみてもこの世界の者ではない。
そう美鈴のようにこの世界に召喚された者だ。
葉豆連、十八歳。美鈴が召喚される数分前にこの世界に来ている。と云っても、本来なら元の世界に帰れるはずだった。
だが、スイクラムが誤ってスイラジュンムに転移させたのである。
そのため自力で元の世界に帰る方法を探しながら旅をしていた。
能力は【ハズレ】であり、どんな攻撃でも自分にあたらない超レアなスキルなのだ。
だが、その能力に気づいていても【ハズレ】と云う能力だとは思っていない。
※無駄情報:因みに連は、短編の主人公だ。
連の隣に座っている女性はファーサシャ・リバルド、耳長の獣人族である。年齢は不詳でいいだろう。
髪は紺色でツインテール。左がハートで右の方は星の飾りがついたリボンをしている。そして可愛い巨乳系だ。
見た目そうは思えないが、かなりの剣の腕前である。
二人は一ヶ月一緒にここまで旅をしてきた。
「ファーサシャ、もう一ヶ月かぁ」
「うん……だけどレンは、まだ元の世界に帰る方法がみつからないんだよね」
「ああ……それに俺がこの世界にいなきゃいけない理由って、なんなのか分からないんだよな」
そう言い連は、遠くをみつめる。
そうこう話をしていると二人組の男が連とファーサシャの方へ近づいてきた。
「おい……可愛い獣人を連れて気にくわねぇ!」
ガタイのいい金髪の男はそう言い連を睨みつける。
「はあ? 確かにファーサシャは可愛いですよ」
そう連が返すと二人組の男は、ピクピク顔を引きつらせた。
「馬鹿にしてんのか?」
そう言い小太りで銀髪の男は、連に殴りかかる。
それをみても連は、微動だにせず動かなかった。
ファーサシャも何もしようとせず、ニコニコとしている。
そう……このあと銀髪の男が、どうなるか分かっていたからだ。
連に殴りかかろうとした直後、空から大きな岩が銀髪の男へ向かい降ってきた。
それに気づくも銀髪の男は、回避することができずに地面に倒れ血を流し気絶する。
(なるほど……今日は岩か)
そう思い連は地面に倒れている銀髪の男をみた。
「てめえ、何をした!?」
「別に何もしてないけど……」
それを聞き腹がっ立った金髪の男は、ナイフを取り出し連に斬りつけようとする。
「あっ、俺……し~らないっと」
「あらら……どうなっても、アタシ達はなんもしてないもんねぇ」
それを聞き不思議に思うも、金髪の男はそのまま連をナイフで刺そうとした。
すると凄く斬れそうな形の大きな岩が、金髪の男の左腕に勢いよく降ってくる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ……」
金髪の男はそう叫び持っていたナイフを落とした。それと同時に、左肩を押え蹲る。そう、左腕が切断されていたからだ。
……連の能力は一ヶ月で、かなりパワーアップしているようである。
「ハァー……流石にキツイな」
「うん、そうだね。どうする?」
「仕方ない……誰か呼んできてくれるか?」
そう言われファーサシャは頷いた。その後、近くに居た人に聞いて歩き手伝ってもらえる者をみつけてくる。
そして連とファーサシャは、手伝ってくれる数名と二人組の男を医療施設へ連れて行った。
――……三日後。
ここは竜人の里ドドリギアの南東部に位置する山間にある闘技場だ。
この闘技場には、里内から出場者と観客が集まって来ている。
勿論ドラバルトとファルスも、既に受付を済ませ控室にいた。
因みに美鈴とミィレインは、観客席にいる。
そしてここは、男性出場者の控室。
ドラバルトとファルスは話をしていた。
「いよいよだな。ファルス、ルールは把握したよな?」
「ああ、多分大丈夫だろう。確か魔法や武器の使用は禁止だったな」
「そういう事だ。飽くまで力比べだからな」
そう言いドラバルトは、控室の覗き窓から会場をみる。
「ここにくるのは、いつぶりだろうか。俺はここに居るのが嫌で里を出たからな」
「そうか……こんなに自然が豊かでいい場所なのに、オレには理解できん」
ファルスはそう言いながら覗き窓まできた。
「まあ、凡人には理解できんのだろうがな」
それを聞きファルスは苦笑する。
「そういえば、お前は昔……魔王の配下だったんだよな?」
「配下……他の者たちからみれば、そうなのだろう。俺は、親友だと思っていた……表向き魔王様と言っていたがな。二人っきりの時は、呼び捨てをする仲だったのだ」
「そうなると……魔王と一番、近い存在だったという事か?」
そう問われドラバルトは、コクッと頷いた。
「多分そうかもしれん。俺は他のヤツらと余り面識がなかった……いや、関わり合うのも嫌だったからな」
「それは、どういう意味だ?」
「俺は……特に四帝の三人が好きじゃなかった。ヤツラのしていたことが、余りにも卑劣だったからだ」
そう言うとドラバルトは、キッと無作為に睨んだ。
「それじゃ、お前は違うというのか?」
「違う……断言はできん。俺も、恨まれることをしていたかもしれないからな。だが……自分が正しいと思ったことは貫いてきたつもりだ」
「なるほど……ミスズのしもべになったのも、それが正しいと思ったからか? それとも元の体に戻りたかっただけか……」
そう問われドラバルトは、思い返してみる。
「さて……どうなんだろうな。確かに元の姿に戻りたかった……だが、それだけじゃない気もする。なんか他に違う感情が……あったような気もしないでもない」
「そうか。それが何か分からないって訳だな。うむ……それも厄介だ」
「ああ……だがなぜか後悔はしていない、一緒にいて楽しいしな」
そう言いドラバルトは、目を細め笑みを浮かべた。
「それはよかった。まあそれが、もしかしたら答えなのかもしれんな」
「そうだな。それはそうと、ファルスは俺たちと会う前って何をしていたんだ?」
「あーそ、それか。前にも言ったかもしれんが、オレは別に何もしている訳でもなく……気ままに冒険しているだけだ」
ファルスはそう言い誤魔化す。
「そうだったな。そのためなのか分からぬが、お前は強い。本当にヒュウーマンなのかと思ったぐらいだ」
「強いか……どうなんだろうな」
「謙遜か? まあ、それがお前のいいところなのかもしれんな」
そう二人の話は大会が始まるまで延々と続いていたのだった。
ここは闘技場の特別観覧席。
一般観覧席にいた美鈴とミィレインはここに案内される。
そして現在美鈴とミィレインは、大きな覗き窓から会場を眺めていた。
周囲には誰も居ない。だが扉の外には警備の者が見張っている。
「ねぇ、ミィレイン……ここ寂しいよね」
「そうねぇ。まるで隔離されてる気がするわ」
「うん、マルバルトさんの話だと……私を護るためって」
そう言い美鈴は、ミィレインをみた。
「そうかもしれニャいけど、なんでそうする必要があるのか分からニャいわ」
「そうだね。それに……聞いても教えてくれなかったし」
「何か隠してる気がするのよね」
それを聞き美鈴は、コクリと頷いた。
「ウチもそう思う」
そう言い美鈴は扉の方をみる。
――場所は移り、ここはマルバルトが居る特別観覧席――
マルバルトは行ったり来たりと落ち着かない様子だ。
「サグリヌ……やはり二つの派閥が動き出したか」
「はい、マルバルト様の指示通り……この三日間仲間と共に女神崇拝派と魔王崇拝派を調べました。その結果、両派閥共に自分たちのアジトに集まっているのを観測しています」
そう言いサグリヌはマルバルトをみる。
この竜人族の女性はサグリヌ・ドグカーン、年齢不詳。マルバルトの下て隠密に動いている者だ。他にもサグリヌのような者はいる。
オレンジ色の長い髪を上でツインお団子にしていた。見た目はキツメである。
それを聞きマルバルトは、難しい顔になった。
「なるほど……それで、内容までは分からぬのか?」
「マルバルト様の予想した通り、魔王崇拝派はミスズの命を狙っている様子です。それと女神崇拝派は、ミスズを引き入れようとしている……」
「やはり……両派共にミスズの存在に気付いたか。個別特別観覧席に隔離して正解だな」
そう言い窓の外へと視線を向ける。
「……だが、もう少し増やした方がいいかもしれんな」
「では、手配を致しましょうか?」
「そうだな……気配を悟られぬ者を数名配置させろっ!」
そう指示されサグリヌは、コクッと頷いた。その後、部屋から出ていく。
(このことはドラバルト達に知られぬまま処理せねばな。それに女神崇拝派は、ドラバルトを狙ってくる可能性がある。
恐らく、この闘技大会に刺客を送っているかもしれぬ。まあ、ドラバルトのことは心配いらんと思うが……もしもの時のために見張りをつけといた)
そう思いながら覗き窓のそばまでくる。
そしてその後もマルバルトは、色々と考えていた。
✶✲✶✲✶✲
そんなことが起きているとも知れずに美鈴とミィレインは、観覧席で話をしている。
「考えても分からないね」
「そうねぇ。今は何も考えニャいで、闘技大会を楽しみましょう」
「うん、そうだね。そうだ! ドラバルトとファルスって、どっちが強いのかな?」
そう問われミィレインは、即「ファルス」と答えた。
それに対し美鈴は「ドラバルト」と返答する。
そして美鈴とミィレインは、その後「違う」や「そうだ」と言い合いを続けたのだった。
ここは闘技場。その高所にある物陰に覆面をした五名の男女が会場を見下ろしていた。そう魔王崇拝派の者たちだ。
この五人の他にもいる。だが活動は、ほぼこの五人でやっていた。
「いよいよ今日からね。だけどミスズとか云う女は、どこにいるのかしら?」
「探したがいない。始まる前に、と思ったがな」
「ホントよねぇ。んー……もしかしたら、アタシ達がしようとしてることバレたのかも」
「それはあり得るな。そうなると厄介だ」
「うむ、どうする?」
そう問いかけられ可愛らしい声の主は考える。
「手分けして探しましょう。それに……恐らく女神崇拝派も来てるはずですので、ドラバルト様を護らなければいけません」
「やはり、ドラバルト様で間違いないのか」
「そうらしいわねぇ。そうでなければ、マルバルト様が警備を強化していないと思うし」
「ああ、そうなるな。まあドラバルト様ならば、命を狙われたとしても大丈夫だとは思うが……向こうもどんな手段でくるか分からないですからね」
「元から気は抜いてはおらんが、更に引き締めないとな」
それを聞き四人は頷いた。
その後、五人は各持ち場に向かう。
――場所は、闘技場の近くにある小さな空き家に移る――
この空き家の中では、三名の男女が話をしていた。
「ドラバルトの方はこれでいい……あとはミスズ様を探すだけだ」
そう言い水色で短い髪の男性は、そう言い目の前の二人をみる。
この竜人族の男性はモドルグ・ドラセルゼ、年齢不詳。女神崇拝派でありドドリギア支部長だ。
その後モドルグは、無作為に一点をみつめた。
「ですが、どこに居るのでしょうか?」
毛先がピンクで白髪の女性はそう言い首を傾げる。
この竜人族の女性はモリナ・バドル、年齢不詳。女神崇拝派でありモドルグの配下だ。
それを聞きモドルグは、思考をめぐらせた。
(確かにどこにおられるのだろうか? まさか誰かに拉致されているなんてことは…………いや、流石にないな。そうであれば、マルバルト様が動き出すはず)
そう考えている。
「モドルグ様、今他の者に探させているのよね?」
赤髪を一つに束ねている女性はそう問いかけた。
この竜人族の女性はアネカル・キドレライ、年齢不詳。女神崇拝派でモドルグの配下である。
そう問われモドルグは、コクッと頷いた。
「そうなのだがな。こうなったら、我々も手分けして探すしかない」
それを聞きモリナとアネカルは頷く。その後、二人はここを出て闘技場に向かった。
(行ったか……それにしても、本当にミスズ様はどこに……考えていても仕方ないか。
それよりも……女神スイクラム様の声が聞こえなくなったと本部から連絡があった。いったいどういう事なのだ? それから一ヶ月……この地に生きてドラバルトが現れた。
まさか、これは魔王復活の予兆…………考えすぎであってほしいですね)
そう考えなおす。そしてその後モドルグは、この空き家を出て闘技場へと向かった。
ここは闘技場。観覧席には、多いとまでいかないが集まってきていた。
そして魔道具により、対戦表が空間に浮かび上がる。
「ほう……これはどういう仕組みなんだ?」
「ファルス、仕組み的にはよく分からん。だが、そう云う魔道具らしい」
「なるほど……それで、これはどうみればいい?」
そう問われドラバルトは、対戦表の見方を教えた。
「……と、いう事だ。それで俺は、最後の十番目らしい」
「んー……オレは、五番目か。それまで、ここで待機してればいいんだな?」
「ああ、そうなる。だが、思ったよりも人数が多いな」
それを聞きファルスは首を傾げる。
「多いって、普通はそうでもないのか?」
「どうだろうな……俺がここに居た時は、四か五名ぐらいだったはず」
――それって……多分、当時のドラバルトを恐れてだと思いますよ。
「それが増えている、か。なんか……嫌な予感がするんだが」
「ファルス、それはどういう事だ。……お前の勘は、意外に当たる。この一ヶ月、そのお陰で助かったことがあったからな」
「勘か……まあ似たようなものかもな。ドラバルト……この試合、気をつけた方がいいかもしれん」
そう言いファルスは、真剣な表情でドラバルトをみた。
「まさかとは思うが、対戦相手が俺を狙っているのか?」
「全てかは分からん。だが、この闘技場にきた時から嫌な空気が流れていた。それだけじゃない、どこからか分からないが……多数の視線もな」
「……どうなっている? もしそれが本当ならば……俺は、歓迎されていないのか。それとも……偽物だと思われて……」
ドラバルトは、悔しさの余り下唇を噛んだ。そのため唇を切ってしまい、血が滲みでる。
「オレの予想だが、前者だと思うぞ」
「根拠はなんだ?」
「お前が魔王の配下で最高幹部だったからだろうな」
そう言われるもドラバルトは、納得がいかないようだ。
「そのことと、どう関係がある?」
「魔王を嫌う者にとっては、お前の存在自体を消したいのだろう」
「……それほどまでにテルマ様の存在を、嫌う者が多かったという事か」
それを聞きファルスは首を横に振る。
「いや、テルマと云うよりは……魔王の存在だろうな」
「そうか……もしそうならば、今後魔王という存在を出現させてはいけない」
「ドラバルト……それは本心か?」
ドラバルトの口からその言葉を聞き、ファルスは不思議に思った。
「当然だ。確かにテルマ様は、強くて皆に恐れられていた。だが、本来は心の優しい方だったのだ」
「言っている意味が理解できん」
「テルマ様は、元々この世界の者じゃない」
それを聞きファルスは驚いた。
「まさか……ミスズのように召喚された勇者なのか?」
「そうなのだろうな。最初の頃は、女神の指示に従っていたらしい。だが、やらされていることに疑問を抱き始めた――」
そう言いドラバルトは、魔王テルマから聞いた話を語る。
それをファルスは、顔を引きつらせながら聞いていた。
(なるほど……かつては魔王自体、存在しなかった。いたのは、魔族という存在のみ。だが魔族の中には良い者も存在する。
それなのにスイクラムは、その善良な魔族までも殺させていたと云うのか。そればかりではなく、魔族以外にも悪さを平気でする者も居たって……)
そう考えていたファルスの顔は、怒りの余り真っ赤になっている。
「ファルス……お前が怒るのも分かる。俺も、そのことを聞き腹が立ったからな」
「そうか……そうなるだろうな」
「それでだ……一番、状況からしてミスズが近い」
それを聞きファルスは頷いた。
「確かにな。ミスズは、スイクラムにより酷いめに遭っている。そうなると、魔王になる確率が高い」
「そういう事だ。……今思うと、ミスズのしもべになったのは……そういう事だったのかもしれん」
「そうかもな。まあ、他の理由かもしれぬが……」
そう言われドラバルトは、ファルスが何を言いたいのか分からず困惑する。
そしてその後も、二人は話を続けていたのだった。
ここは特別観覧席。
あれからずっと美鈴とミィレインは、色々な話をしていた。
「そういえば、この部屋って結構……高そうな物ばかりあるね。それも壺が多い……割ったら何か出てきたりして……」
「……あのねぇ。そんニャことしたら、弁償代が大変でしょっ!」
「ハハハ……そうだね。ついついゲームのことを思い出しちゃって」
それを聞きミィレインは首を傾げる。
「ゲームって、なんニャの?」
「あーそっかぁ。ここは、別の世界で……ゲームって言っても分からないよなぁ」
「そうね……でもミスズをみていると、そのゲームが面白いんだろうニャあって伝わってくるわ。そのゲームって、すぐできるの?」
そう問われ美鈴は、首を横に振った。
「流石に無理かなぁ。可能だとすれば、そういう物を創り出す能力があればだね」
「そうニャのねぇ。やってみたかったけど、残念だわぁ」
そうこう話をしていると「ドンッ、ドーン」と、二発の火炎球弾が空高く打ち上げられる。
「あっ、始まりの合図だ」
「いよいよね。まあ、ファルスが勝つと思うけど」
それを聞き美鈴は苦笑した。
――場所は、美鈴たちの居る特別観覧席の上に移る――
ここには魔王崇拝派の可愛い雰囲気の者がいた。
(この下から話し声が聞こえて来たわ。それに、この観覧席の扉の前には……警備の者が二人いる。そうなると……ここで間違いないかしら)
そう思い魔道具を使い仲間に連絡をする。
✶✲✶✲✶✲
数分後、美鈴の居る観覧席の上に魔王崇拝派の者が五人揃った。
「やっと、来ましたね。何かあったのかしら」
「ああ、ここを見張ってるヤツが二人いた」
「アタシの来た方角にも、一人いたわ」
「こっちにも、三人居ましたよ」
「儂の方は、運よく居なかったな」
それを聞き可愛い雰囲気の女性は考え始める。
「……護衛を強化している。マルバルト様がミスズを護っているって、どういう事かしら」
「まさかマルバルト様は、女神側につく気なのか」
「んー……それはあり得ないわ。だってドラバルト様は、かつての魔王様の右腕と云われたお方よ」
「ええ、あり得ませんね。そうでなければ……ミスズは、こっち側ってことも考えられます」
「だとしたら、こっちに引き入れたらどうだ?」
そう言われ可愛い雰囲気の女性は首を横に振った。
「あり得ないですわ。女神に召喚された者が、そう簡単にこっち側にねがえるなんて」
「そうね……じゃあ、ヤルしかないわ」
それを聞き可愛い雰囲気の女性は頷く。
「そうなると……扉の前に居る見張りを、なんとかしなければいけませんね」
「そうですね。では、そのあと下の部屋に侵入します」
そう言い可愛い雰囲気の女性は、四人を順にみる。
それを聞き五人は頷く。
そしてその後、五人は見張りが居る通路側に向かったのだった。
ここは闘技場。試合の方は既に始まっていた。
ドラバルトとファルスは、試合をみていたが飽きてくる。
そのため自分たちの番がくるまで、闘技場の中をみて歩くことにした。
そして現在、二人は通路を歩きながら話をしている。
「俺が狙われている。ならば……ここを歩いていれば、襲ってくる可能性はあるな」
「だろうな。それを分かっていながら……なんで、ウロウロしている?」
「フッ、それが分かっていて……ジッとしていられるかっ!」
そう言いドラバルトは、ジーっと無作為にみつめた。
「確かにそうだな。オレも同じ立場だったら、そうするだろう」
「そういう事だ。だが、思ったよりもくいついてこないな」
「そういえば……そうだが、油断はするなよ」
ドラバルトはそう言われ頷く。
そうこう話をしながら二人は通路を歩いていた。
――場所は、美鈴の居る観覧席へ移る――
美鈴とミィレインは、覗き窓から試合を観戦していた。
「うわぁー、みんな強いなぁ」
「そうね……でも、あの二人ニャら簡単に倒せると思うわ」
「うん、そうだね。早く二人の対戦みたいなぁ」
そう言い美鈴は、ワクワクしながら試合をみている。
と、その時……通路側で物音がした。
それに気づき美鈴とミィレインは、扉の方へ視線を向ける。
「なんの音だろう?」
「ミスズ、気をつけて! なんか嫌な感じがするわ」
ミィレインはそう言い警戒をした。
「うん、ウチも嫌な予感しかしない」
そう言うと美鈴は、いつでも能力が使えるように身構える。
すると扉が、ガチャガチャと音がした。
美鈴は普通じゃないと思い、即座にメニュー画面を開き操作する。その後、全体と攻撃を選びスロットを回した。
――バキッ!!――
それを待ってくれる訳もなく、もの凄い音をたてて扉が破壊される。……恐らく、どんなことをしても扉が開かなかったのだろう。
ミィレインは美鈴の前にくると、即座に水の防壁を張った。
すると運よくスロットが停止する。そして、出たのは【攻】だ。
その間、部屋の中に入って来たのは魔王崇拝派の二人である。……因みに、見張りが通路側に三人いた。
「考えてる暇がない! ミィレイン退いて!!」
そう言われミィレインは、右側にズレる。
それを確認すると、向かいくる二人に両手を翳した。
……因みに、どちらも覆面と黒装束である。その一人は可愛らしい雰囲気の女性、もう片方が背の高い痩せ型の男だ。
《攻撃無効!!》
美鈴はそう言い放った。すると、魔王崇拝派の二人の全身が眩く光る。
その言葉を聞くも魔王崇拝派の二人は、言っていることが理解できない。そのため、美鈴とミィレインへと攻撃を仕掛けようとした。
背の高い男はミィレインを殴ろうとするが、狙いがずれて当たらない。それを何度も繰り返すが無理だ。
「クソッ……なんで当たらない!?」
片や可愛い雰囲気の女性は、両手に電気の球を溜めると美鈴へ何発も放った。だがその電気の球は美鈴に当たらず、四方八方へ飛び壺や壁や床などを破壊する。
「これは……いったい、何をしたのかしら」
そう言い可愛い雰囲気の女性は、覆面のしたから美鈴を睨んだ。
「何って、ウチは能力を使っただけだけど」
「能力……異能力ね。どんな能力か知らないけれど、使わせなければいいだけかしら」
可愛い雰囲気の女性はそう言い戦闘態勢に入る。
そして背の高い男も、攻撃体勢に入った。
それをみた美鈴とミィレインは身構える。
そしてその後も美鈴とミィレインは、魔王崇拝者である二人の相手をしていたのだった。
ここは闘技場の通路。
ドラバルトとファルスは、通路を走っていた。そう、何かを破壊したような音が微かに聞こえてきたからだ。
そして現在、ドラバルトとファルスは音がした方へと走り向かっている。
「あの音は、何かを破壊した音だ」
「ああ、オレも微かに聞こえた」
「ファルス、なんか嫌な予感がする……急ぐぞ!」
そうドラバルトが言うとファルスは頷いた。
✶✲✶✲✶✲
ここは美鈴とミィレインが居る特別観覧席。
あれから美鈴とミィレインは、魔王崇拝派の二人と戦いを続けている。と言っても、ほぼ美鈴とミィレインはみているだけだ。
そして美鈴は現在、メニュー画面をみていた。
魔王崇拝派の二人は、あらゆる攻撃を美鈴とミィレインにしている。だが、当たらないようだ。
(あと五分か。効いている時間が分かるようになったから、能力を続けて出せるんだよね)
そう思い美鈴は、メニュー画面を操作し始める。
すると、見張りをしていた魔王崇拝派の一人が部屋に入ってきた。
「二人共、まずいわ……ドラバルト様が誰かとこっちに向かって来てる」
それを聞き魔王崇拝派の二人は、攻撃をやめる。
「悔しいですわ。ですが、ここは撤退するしかありません。次は、必ず仕留める……首を洗って待っているといいのかしら」
「そういう事です。では、早く逃げましょう」
それを聞き可愛い雰囲気の女性は頷いた。
その後、魔王崇拝派の二人は扉へと駆けだす。
「待って! なんでウチのことを狙うの?」
美鈴はそう問いかける。
すると、可愛い雰囲気の女性は立ちどまった。そして振り返ると、美鈴へ視線を向ける。
「なぜ狙われたか? 自分の胸に聞いてみたらどうかしら」
「分からないから、聞いてるんでしょ!」
それを聞くも可愛い雰囲気の女性は、仲間と共に部屋から走り出ていった。
「いったいなんなのよ。あーあ、ツボ割っちゃった。これ……あとで弁償だよね」
「そうニャるわね。これ……相当な金額がとぶわよ」
そう言われ美鈴は苦笑する。
「とりあえず片づけよっか」
美鈴はそう言い片付け出した。
それをみたミィレインも片付け始める。
✲✶✲✶✲✶
美鈴とミィレインが片付けをしていると、息を切らしドラバルトは部屋に入ってきた。
「ハァハァハァ…………ミスズ……いったい、これは何があったのだ!?」
そう言いドラバルトは、周囲をみたあと美鈴のことが心配になり視線を向ける。
「これは……酷いな。ミスズ、何があった?」
ファルスは部屋に入るなり、余りにも部屋の中が酷かったためそう問いかけた。
「ドラバルトにファルス、んー……実はね――」
そう言い美鈴は、ミィレインとさっきまで何があったのかを説明する。
「……覆面に黒装束、なんで狙われたのだ?」
「ドラバルト、それが分からないの。逃げる間際に聞いたけど、自分の胸に聞けって……どう考えても心当たりがなくて」
「なるほど……ドラバルトだけではなく、ミスズも狙われているという事だな」
ファルスはそう言うと、真剣な表情で考え始めた。
「えっ! ドラバルトもなの?」
「ミスズ、ああ……断言はできんが……そうらしい」
そう言うとドラバルトは、険しい表情で無作為に睨んだ。
そしてその後も美鈴たちは、片付けながら話をしていたのだった。
ここは闘技場の美鈴とミィレインが居る特別観覧席。
あれからドラバルトはマルバルトの居る主催者専用観覧席へ向かった。
主催者専用観覧席までくるとドラバルトは、マルバルトに会い何があったかを説明する。
それを聞いたマルバルトは、自分の部下と共に美鈴の居る特別観覧席に向かった。
そして現在、美鈴とミィレインとドラバルトとファルスとマルバルトは話をしている。
その周辺では、数名のマルバルトの配下の者が部屋の片づけをしていた。
「なんてことだ。部下が数名……やられていた。まさか、こんなことに……」
マルバルトは険しい表情で一点をみつめる。
「父上……その様子では、もしかしてこうなることを予想してたのか?」
「ああ、魔王崇拝派と女神崇拝派が動くとすれば今日だと思っていたからな」
「……まさか、二つの派閥が存在しているのか?」
驚きファルスはそう問いかけた。
「そうなる……困ったことにな」
「それじゃ、ウチを狙ったのって?」
「恐らく、魔王崇拝派の者たちだろう」
それを聞き美鈴は首を傾げる。
「んー……いまいち分からない。どうして魔王崇拝派が、ウチの命を狙うの?」
「もしかして、ミスズが女神に召喚された勇者だからか?」
「ドラバルト、そういう事なんだろうな」
それを聞きドラバルトは、怒りを露わにした。
「それだけで、ミスズの命を狙ったと云うのか……許せん!! そいつらは、どこに居るんだ!?」
「落ち着かんか、ドラバルト! そのことも踏まえ、話せばならんことが他にもある」
「他にも……俺を狙っているヤツらのか?」
そう言いドラバルトはマルバルトをみる。
「既に狙われたのか?」
「いや、まだ狙われていない。ただ大会の様子が、おかしいように感じた」
「そういう事か……それは当たっている。この大会には、数名の女神崇拝派が参加しているからな」
ドラバルトはそれを聞き複雑な思いを抱いた。
「俺の居なかった期間、いったい何が起こったと云うんだ」
そうドラバルトが言うとマルバルトは、何が起きたのかを説明する。
「……馬鹿げてる。たかが、好きごのみだけのために……派閥ができただと」
「そうなるな。だが、女神崇拝派は規模が大きい」
「それって、他の地域にも多数の信者がいるってこと?」
そう美鈴が聞くとマルバルトは、コクッと頷いた。
「じゃあ……魔王崇拝派は、ここだけなのか?」
「ドラバルト、それは分からん。だが、少ないのは確かだ」
「それで、どっちの派閥も誰が指揮をとっているのか知っているってことか?」
そうファルスに問われマルバルトは、少し悩んだあと話し始める。
「ああ……勿論だ。それにドラバルト……魔王崇拝派の指揮をとっている者は、お前も知っている」
「それは、いったい誰なんだ?」
「ミャルモだ。お前が覚えているか分からぬがな」
それを聞きドラバルトは、一気に血の気が引いた。
「まさか……でもなんで?」
「ドラバルト、知ってるの?」
「ああ、ミスズ……俺の妹だ」
それを聞き美鈴とミィレインとファルスは驚く。
そしてその後も美鈴たちは、マルバルトから話を聞いていたのだった。