片手で丸を作って


 キノコの形をした髪型で後ろ側は少し長め
めの髪があった。

 黒髪が白い肌に透き通って、肌のつややか
さを感じさせられた。 

 もう少し似合う髪型があるのにって思って
しまう。

 何もかも備わっている陸与陽。

 僕とは大違い。

「瓜生明……。あー、ドーナツ好きで知られ
ている人か」

 予告もなく、僕の本名を呼ばれたので、そ
れだけでも急なキュンに胸が躍る。

 なぜか僕の名前を知っていた。 

 陸与陽は手元に手を添えて、クスッと笑っ
ていた。

 接点もないはずなのに、僕のことは知って
いた。

 なんで? 口角が緩むのを陸与陽に気付か
れないように唇を噛む。

「僕のこと知ってるの?」

「知ってるよ、そりゃ、知ってるよ」

「え? それどういう意味?」

 僕はその言葉に反応した。

「うーん……さあ?」

 ウフフと笑ってからどこかへ去っていた。

 そのあと、キーンコーンカーンコーンと鐘
が鳴った。

 僕は陸与陽とは接点がないはずだった。

 けれど、瓜生も知らなかった。

 陸与陽は見ていたんだ、瓜生明をずっと。