片手で丸を作って

夫だと思う。あとで食べてみて」
 どんな反応するか気にしていたが、喜んで
もらって嬉しい。
 えへへと笑みが零れる。
「ありがとう。今食べていい?」
「いいけど」
 食べたいという与陽は近くにあった椅子に
座り、ドーナツが入っている袋を豪快に開け
る。
「…うん、うまっ。お店開けるんじゃないの、
明。スイーツ作れるのすげぇな」
 ドーナツ一個しかなかったので、あっとい
う間に口の中に頬張ってなくなっていた。
「なくなるのは早っ」
 僕は与陽の目の前に座り、頬張って食べ終
わる彼を見ていた。
「美味しい、本当ありがとう」
 嬉しそうに微笑む与陽は終始口角を上げて
いた。
 すごい、嬉しそう。
 作ってよかった。
「よかった。喜んでくれて」
 僕は素直に返事をして、前にいる与陽に礼
を言う。
「…明」
 与陽は足を組んで、僕の名前を呼ぶ。
 椅子から立ち上がり、僕は開いている窓に
行き、カーテンを開けた。
 僕は片手で丸を作った。
「与陽。丸!」
 僕は笑顔で与陽に言い放つ。
 急な僕の言動に与陽は顔を左に傾けてから
笑いかけた。
 それに与陽は僕の近くに来て満面な笑みで