片手で丸を作って

そこで待ってるから」
 ツーツーと通話は切れた。
 あの場所って、どこだ。
 ヒントが少なすぎる。
「あの場所。初めて会った場所……
 もしかして、僕は身支度を整えた。
 洗面所にある鏡を見て、髪が少しはねてい
たのでワックスをつけて、前髪を左右にブラ
シでかき分けた。
 化粧水を顔につけて、頬にあるにきびを気
にした。
「うわぁ、これどうしよう」
 リビングに戻り、リップを買ったついでに
ついてきたファンデーションを手にして、洗
面所で鏡を見る。
 手の甲にファンデーションをつけて、指で
頬につけた。
「よし。これでオッケー」
 僕は自分の顔を確認してから、気合を入れ
た。
 靴を履き、外に出た。
 好きな人の前ではみっともない所はみられ
たくない。どんな些細なことでも。
 僕は学校まで走った。
 多分、学校だ。
 僕たちが初めて会ったのは僕の教室だ。
「………っ…覚えてたんだ」
 僕は驚いた。
 覚えているはずがないと思ったから。
 僕は走って、休みの土曜日に学校へ行った。
 家から学校までは歩いてすぐ着く。
 校門は開いていたので、門を両手で動かし
て開けた。