片手で丸を作って

のうちに材料も集めた。
 あとは作るのみ。
 一時間後。
「完成っ…!」
 僕は腰にかけているエプロンに手を拭い、
床に寝そべる。
「喜んでくれるかな。与陽」
 一人で呟きながら、起き上がる。
「後は、ラッピングするか」
 ダイソーで買ったラッピング用品やネット
で買った高級そうな袋も開けた。
 数分後、ラッピングも終わり、完成したの
だ。
「今度こそ終わった!」
 よし、これで与陽にあげよう。
 その前に連絡、連絡。
 手を洗い、テーブルに置いてあった携帯を
手にする。
「与陽の連絡先と……」
 携帯を指で連絡先を探していると、スマホ
が振動した。
 それは与陽だった。
「与陽!」
 僕はすぐ電話に出た。
「出るの早くない」
「ちょうどスマホ触ってたから。どうしたの
?」
「会いたい」
 間髪入れずに熱が籠った言葉が耳に通る。
「僕も会いたい」
 僕も会いたかった。
 ドーナツを作っている間も与陽の笑う声・
真顔な表情・口を手に当てて、僕のことを可
愛いと口にする与陽がいた。
「じゃあ、あの場所。あの時の時間で」
「あの場所って…」
「分かっていると思うよ。初めて会った場所。