片手で丸を作って

 俺は返事をすると、お兄ちゃんと呼ぶ妹の
声がした。
「どうした? 眠れないのか」
 妹が来たので、ベットから起き上がり、明
かりをつける。
「うん、なんかね。悪い夢見たみたいで。あ
たしの大事な友達がいなくなったの」
「いなくなった?」
 妹が俺の所へ来て、机の近くにあった椅子
に座る。
「うん。とてもとても大切なのにいなくなる
の。しかも、笑顔で。それがあたし怖くて、
本当にいなくなるんじゃないかって思ったん
だ。今、連絡したら返事来たからいるんだけ
ど、それでもあたし怖いんだ」
 俺の妹は中学一年生。
 まだ幼くて、小学生からの親友の話だろう。
 学校から帰る度にその子の話をしていたか
ら。
「……それは怖いな」
 妹はもう泣いていたのか目が腫れていた。
「大丈夫だから。だいじょうぶ」
 俺は妹を慰めようと、頭を撫でる。
 妹はうんと涙を押し殺して、返事をしてい
た。
 撫でながら俺は思った。
 明も話せないほどの何かを抱えていて、言
葉に詰まったのではないかと。
「大丈夫。大丈夫」
 俺は妹を抱き寄せて、また頭を撫でる。
 妹に元気になってもらおうとしているのに、