片手で丸を作って

 明は天性の人たらしだけど、本人は自覚し
ていない。
 周りに愛されていると。
 それでも明には影があるのかと思うと、俺
はもっと明を知りたくなった。
 知りたい、もっと明のことを。
 具体的に細かい詳細な情報を知りたい。
 嫌いなこと・好きなこと・苦手なもの・特
異なこと・人間関係すべての事柄について深
く海まで沈みそうなくらいまで知りたい。
 俺は家に帰ってから、寝る直前まで明のこ
とを考えていた。
 どうしたって、明を思い出す。
 料理をしていても、お風呂に入ってても何
をしたって明の顔が浮かぶ。
 生活に窮屈になっているような気がするが、
俺はそれが逆に当たり前のようになっていた。
 明を想わない日常生活に戻るのは俺にとっ
て心がなくなっていく。
 今はカラフルな色が溢れていて、心も体も
達成感でいっぱい。
 その色が溶けていくかのようになだれ落ち
ていき、どんな色か分からなくなる。
「明」
 俺は電気をつけないままベットの上で体育
座りをして、両手に携帯を持って、明から連
絡がないか確認した。
 深夜になってもこなくて、部屋のドアから
ノックオンがした。
「はい」