片手で丸を作って

 
 その訳は、誰にも言えていない。

 言ったとしても、現状は何も変わることはないから。

「…あるよ」

 僕は真顔で言ったが、目を背けて与陽の方を見ないようにした。

「そうなんだ。聞いてもいい? 俺、聞きたいんだけど」

「……うん」

 顔を上げると、与陽は僕を見て、聞く態勢を取っていた。

 僕はそのまま黙ってしまった。

 話そうとしていたのに言葉が出てこない。

「……っ……」

 僕は目を泳がせて、下を向いてを繰り返した。

「…いいよ、無理しなくて。明が話したくないならいい」

 与陽は目を逸らしてから考え込んでいた。

「明を困らせたくない。そんなに悩むことなら俺に無理に言わなくていい」

 数分考えた後、与陽は僕に顔を向けて、真剣な目で僕に訴えてきた。

 無理はしていない。

 ただ、僕が情けないだけで与陽を困らせたい訳じゃない。

「……言える……」

 僕は拳を握りしめて、与陽と目を見据える。

 言いたいのに……言えない。

「…っ……ごめん」

 僕は与陽に謝った。

 口は開いては閉じてを繰り返してしまった。

「明が謝ることじゃない」

 与陽がそう言うと、食堂のおばあちゃんの声が響き渡る。