片手で丸を作って

ほんと、僕の心臓持たないんだけど。
「決まったなら、発券機で買うか」
 お互いの手を離してから、僕は胸ポケット
にあった小銭入れを出す。
 僕が注文したのはスイーツセットだ。
 ここの食堂はスイーツまでも売っていて、
僕はよく注文して食べている。
 いろいろなスイーツセットがあるので迷っ
てしまうのだ。
「俺はこれにしよう」
 与陽はコーヒー一つとクッキー一つを買っ
ていた。
 二人は発券機で買ったものを食堂のおばち
ゃんに渡してから、窓際のテーブルに向かい
合わせで座った。
「………」
 食堂には女子二人組や職員がまばらにいる
だけで騒がしくなく、静かな空間であった。
 僕と与陽は向き合い、何を話そうか迷って
いると与陽が先に声を出した。
「明はなんでドーナツを好きになったの?」
「え?」
 思いがけない質問に僕は口を開けたまま呆
然としていた。
「…いや…だって前からドーナツ好きだけど、
こんなに好きになるってことはなにかきっか
けがあるのかなって」
 与陽は僕に対する疑問を口にした。
 確かに与陽の言う通り、僕はドーナツを好
きになったのは訳があった。