片手で丸を作って

 クスッと笑ってから、僕に問い掛ける。
 分かってるくせに。
 試すようなことを言ってくる。
 本当にズルい。
「……汗ばむし。みんな見てるし」
「別に俺は気にしないよ。明が嬉しいと思う
ことが最優先だから」
 右手で繋いだ手を与陽は上にあげて、腕を
ブンブンと振っていた。
 本当に嬉しそうに歯を見せて笑っていた。
「与陽って本当にそれ無意識でやってんの?」
「え? 別に普通だけど」
 キョトンしたような顔で僕の右手を強く握
りしめてきた。
 与陽の普通はこういうことなのか。
「明に好かれたいからね。ここ行こう」
 そう言ってから、与陽が止まった場所は食
堂だった。
「ご飯。一緒に食べたことなかっただろ。だ
から、何か食べよう」
 僕らの学校は二十四時間食堂が営業してい
る。
 他の学校にはないことだ。
 残業する先生たちや寮に住んでいる学生も
利用するので、二十四時間になったらしい。
 二十四時間はありがたい。
 ちなみに僕はたまに利用するくらいだ。
 大体の食事はコンビニ弁当が多い。
 僕たちは食堂の目の前にある看板に書かれ
ているメニュー表をお互い真剣に選んでいた。