片手で丸を作って

せれば行かざる負えないだろ」
 朔は僕のことを心配してくれたのだ。
 好きなドーナツも口にしない僕をなにがあ
ったのか朔なりに考えてくれたのだろう。
 わざわざ、話す機会を作ってくれた。
 僕は与陽と話さないといけない。
 今が話さないといけないのに怖気いてしま
う。
 授業が終わり、放課後になった。
 もうすぐテストが始まるので、授業が終わ
っても勉強している人がちらほら見える。
「……僕も勉強しないとな。その前に鞄を返
してもらわないとなにできない…」
 今日は肌寒かったので僕はコートだけ着て
から、教室を出ようとした。
 その時に、男子クラスメイトに声を掛けら
れた。
「明さ。美味しいドーナツ屋って知らねぇ?」
その男子クラスメイトはドーナツ関連で何
かないかと聞いてくる。
 彼女がスイーツ好きだそうで、美味しい店
巡りをしているらしい。
「ああ、それなら……」
 僕はズボンのポケットから携帯を取り出し
て、お勧めの店を探す。
 その時、教室の前の廊下で二人で話してい
た所に誰かの手が捕まえられた。
 誰だと振り返ると、そこには与陽がいた。
「え?」