片手で丸を作って

 なんでかというと、ある日、自分の教室に
あるベランダで朔と談笑していた時、高身長
の彼が噴水の近くにポツンと座って、サンド
イッチをかじっていた。

 背筋をまっすぐにしているのに、少し猫背
気味に口にくわえていた。

 普通にご飯を食べているだけだが、目を奪
われた。

 顔も見えなく自信なさげなのに背筋をピン
ッとしている姿に興味があった。 

 何を考えているのか、サンドウィッチを口
内に入れていた。

 僕はドーナツを片手に持ち、彼をずっと観
察していた。

 朔はマシンガンのように話していて、聞く
ふりをしていた。

「うんうん、うん」

 僕は適当に返事をして、陸与陽を見ていた。 

 瞬きもせずに目を見開き、何かを鑑賞する
かのように眺めていた。

 人を眺めると言ったら、失礼かもしれない
が映像美としては綺麗だ。

 ドーナツを齧って噛んで、その光景が風景
と一体化していた。

 じっと見つめていると、陸与陽が僕の方へ
向いてきた。

「あ、やばい!」

 陸与陽と目があった僕は身体が反応して、
すぐ隠れてしまった。

 おいおい、気づかれてないよね。