与陽は隣にいる僕に近づき、耳元で囁く。
「なっ……」
「顔を赤くして。分かったよ。今日、帰るね。顔見れてよかった。じゃあ」
急に与陽は立ち上がり、ごちそうさまでしたとテーブルにマグカップを置き、帰っていた。
「なっ……与陽、待ってよ」
僕は思わず立ち上がった。
玄関先まで僕は行ったが、一足遅かった。
先までグイグイきていた与陽。
素直になれない僕を見て、怒ったのかつまらなくなったのか。
これ以上、僕の部屋にいたら、自分の心臓が持たなかったので安心していると同時に寂しさが増した。
早く僕の視界から見えなくなって、このドキドキが収まってほしいと思っていたのに。
与陽がいなくなって、帰ってほしくなかった思いが強くなっていく。
はぁと一息ため息を吐き、僕はマグカップを流し台に置き、またソファーに横になる。
「与陽」
僕は彼の名前を呼んで、テレビをつけた。
関係のない情報が僕の耳から流れてきて、それが雑音に聞こえてきた。
与陽の甘い声が僕の耳から聞こえてくる。
今いないのに。
こんなに想っているのに、僕こんなんでいいのかな。
与陽は自分の想いを僕にぶつけてくるのに、僕は何もしていない。
今度、会ったら、ちゃんと言おう。



