片手で丸を作って

 与陽は僕を彼の前に向き直して、僕の右腕
を掴んで、彼は僕を抱き寄せる。
「……っ…僕の気持ちもう分かってるでしょ。
与陽」
「分からないよ。明。俺と知り合って日が浅
いからかもしれないけど。まだ、明は俺のこ
と友達だと思ってる」
 僕は右手で与陽の右腕を掴み、手を払う。
「…それは逆でしょ。与陽は僕のこと友達の
好きだと思ってる。僕はゲイだから。男を好
きになる。お前は違うだろ。友達の好きって
ことだろ。僕をバカにするのはいい加減にし
て」
 与陽は僕のことを気に入っているから。
 そんなことが言える。
 恋愛感情だったら簡単に言えるはずがない
し、距離だって詰めようと努力はするが、簡
単にはいかない。
「…ん、じゃあ、俺もゲイだって言ったらど
うする?」
 首を傾げて、ニヤッと笑う与陽。
 与陽がゲイ。
 そんな訳ないよね。
 だって、噂で聞いたのは何人も彼女がいる
とか、溺愛している彼女がいるとか。
「……どうするって……」
 僕が言いかけた時、ブツブツカッチと水を
入れていた電気ケトルが沸いた音がした。
「じゃあ、ここまでだね。沸いたし」