片手で丸を作って

 ソースで炒めた味をスプーンで掬って、口
内に入れたのかすごく美味しそうにしていた。
「美味しい?」
「うん、美味しい。これハマりそう。ありが
とうな。これ、母さんたち喜ぶわ。明はご飯
食べた?」
「軽く食べたよ」
 途中からスピーカー音にしていたので、料
理する音やガサガサと袋の音が細かい音が聞
こえてきて、音だけでも与陽の状況が目に見
えてきて、微笑んだ。
「何食べたの?」 
 料理を終えたのかゴソゴソと音がして、携
帯を置く音が聞こえたと同時に与陽の顔が出
てきた。
「うわぁ! え!」
 そこには与陽の顔が画面に表示されていた。
「なんでビデオ通話! いつの間に切り替え
たの」
「…いや、なんか顔見たいなって思って。あ、
今ダメだった? 俺に会いたくなかった?」
 いつも思うが、急にデレを入れてくるとこ
ろとか。
 反則級の反則だと思う。
 与陽は多分、無自覚でそれをやっている。
 こんなこと言われたら、返したくても返せ
ない。
「……会いたいに決まってるじゃん。何言わ
せてんの」
 僕は携帯画面に表示されている与陽の顔を
背けて、自分の後ろ姿を画面に見せた。