片手で丸を作って

「どうしたの?」
「いや、調味料取ろうと思って」
 冷蔵庫から調味料を取り出したのか、バン
ッと扉を閉める音がした。
「与陽。何作ってんの?」 
「チャーハン。今日食べたくてさ。夜だけど
ガッツリ系食べたくて。明は何の味付けが好
きなの?」
 優しい問いかけにウッと胸を鷲掴みにされ
る。
 こんな優しい声に口角が緩む。
 ニヤニヤとした顔を見られなくて、声だけ
の電話でよかったと安堵しながらも与陽の料
理をしている姿を見たい僕がいる。
「……うーん、なんだろう。コンソメ? い
つも食べているのは焼肉ソースかな」
「へぇ、瓜生家はガッツリ系か」
「陸家はあっさり系なの?」
「割とそうだね。たまに食べたいなぁって思
う時は濃いめの味にしてるね。あっ、折角だ
からソース入れてみようかな」
「あれ? 調味料入れたんじゃないの」
「まだ、入れてなかった。だから、ポン酢か
らソースに変えようかなって思って」
 冷蔵庫からソースを取り出したのかしまっ
た音がまたした。
「入れた?」
 調味料を入れたか僕は確認をした。
「入れたよ。中々、いい色してるね。うん、
うん。おっ、うん。味もいい感じ」