片手で丸を作って


 与陽の連絡先を知れたことが嬉しかった。

 家に帰ってからも、携帯画面に表示されて
いる連絡先をベットに横になり眺めていた。 

「えへへ……」

 我ながら、一人で笑っているなんて気持ち
悪い。

 だが、こうなってしまうのは仕方ない。

 彼のことが好きなんだから。

 スマホを握りしめて、目を瞑って眠りそうに
なった時にスマホのバイブ音がした。

 ブルブルブルブルブル

 スマホのバイブ音が手のひらで踊っていた。

「……うん?」
 目を開くと、携帯画面には与陽となってい
た。
「与陽!」 
 僕は携帯画面に与陽となっていて、起き上
がった。
「うわぁ、どうしよう。えーと、うーん」起き上がり、ベットで正座をして、咳払い
をして応答ボタンを押した。
「…もしもし、瓜生です」
 僕は自分の名前を名乗って、答えた。
「あはは。知ってるよ」
 与陽は大笑いの声が電話越しからも聞こえ
てくる。
「そうだよね。……うん? なにしてるの?」
 与陽の笑い声の他にジュージューとした音
がしてきた。
「ああ、料理してる」
「与陽。料理できるんだ。すごい!」 
 キリッとした目で優しくて料理までできる
なんて、完璧すぎる。
「すごくないよ。小さい時から料理をしてる
から慣れてるだけだし。炒めるだけだよ」
 フライパンで何かを炒めているのか音が聞
こえてくる。
「いや、それだけやるだけでもすごい。僕料
理なんてしないから」
 僕はベットから自分の部屋にあった椅子に
座り、両手に携帯を包むように持ち与陽の声
に耳を傾ける。
「そうなんだ。明は何してるの?」
「僕は部屋でゴロゴロしてるよ」
 本当は一生懸命に与陽の声を聞いてるなん
て、言えなかった。
 両手で持っていた携帯は汗ばんでいて、何
を話せばいいのか緊張していた。
「いいね、ゴロゴロ。あ、ゴメン。ちょっと
待って」