片手で丸を作って

 だけど、ハニーチュロを食べたら、口内も
身体も心も安らいでいくのを自分でも分かっ
た。

「……美味しい……」

 誰もいない休憩スペースで静かに一人で泣
いた。

「ううう……」

 苦しい。くるしい。

 俺はどんな声も暗く感じる。

 それは直に否定をされた訳じゃない。

 先生や友達の言葉を自分の脳内で陰口を言
われているような感覚がある。

 被害妄想だと思われるかもしれない。

 けれど、普通に話しているだけで何かを勘
ぐってしまう。

 彼の言葉だけが光り輝いていた。

 自分の陰口なんか脳内で再生されなかった。 

 奇跡だった。

 この時の僕は彼一人だけが、自分の陰口が
聞こえなかった。

 これは彼を知るしかないと思えた。

 影で彼を見守った。

 名前を知っていたし、よく見かけた。

 クラスが違うこともあるが共通点はなく、
同級生なのに話すことはなかった。

 あの時、体育館で偶然会った時は驚いた。

 今、こうして話している。

 話せなくて、目で追っていた自分に言いたい。

 今度こそ、会える時がくるからと。

「与陽。なに笑ってんの」

 左側に座っていた聡はツンツンと俺の左肩を人差し指で突いてきた。