片手で丸を作って

 与陽は口角を上げて、そういうことだよ、何か問題でもという顔で訴えてくる。

 くッ、なにこの子犬のような瞳で見てくる
とか反則だろ。

 僕は与陽の方を見ないように、左側に向けて顔を両手で覆った。

「おーい、明。聞こえてるのか?」

 僕の顔面の前で右手を振って、与陽が僕に
言ってくる。

「あ、うん」

 顔を上げて、与陽の顔面の近さに少し後ずさりした。

「じゃあ、そういうこと。また、連絡するね。
じゃあ」

 与陽は左手で振ってから、ドアを開けて自
分の教室へ戻っていた。

       *

 与陽が置いて行った聡と実は二人になった。

なにどういうこと? 

あの与陽があんなこと言うなんて。

「ねぇ、実。与陽、どう思う?」

 腕を組んで、聡は実に声を掛ける。 

「あれは、もう俺らじゃ止められないね。こ
うなった与陽は強い気がするな~」

 実はどこからか分からないが、ズボンから携帯
を取り出して、笑みを浮かべてゲームをして
いた。 

「なっ。止められないと思うんだよね。あん
なキラキラした姿見せられると、こっちもニ
マニマしちゃうよね。実」