片手で丸を作って

 頬を触った温もりが感じる中、与陽の右手
は離れた。

 離れていた右手が寂しさを感じていた。

 けれど、離れないでとは言えない。

 与陽が理科室の長机に腰を掛けて、両手を
後ろに手を置き、僕を眺めるようにニコリと微笑んでいた。

「……初めてじゃない?」

「そう。話しても長いから。徐々に知ってい
こう。ってな訳で、ラインのQRコード教え
て」

 足を組んでから、ひょいと起き上がり、僕
の元へ駆け足で駆け寄る。

「…あ…はい」

 僕はチラッと与陽を見て、ズボンのポケ
ットにあったスマホを取り出した。

 自分のQRコードを出そうと指でタッチしていた。

「あ、俺自分のQRコードを出すから。明は
読み込んで。はい」

 僕は与陽のQRコードを読み込んで、出て
きたラインのアイコンが出てきた。

 犬の写真でその横には笑顔で映っている与
陽がいた。

「……与陽って、このアイコンみたいにさ、
笑えばいいのに。なんでいつもあまり笑わな
いの?」

 僕はアイコンを見て、与陽の顔を眺めた。

 笑っている方が可愛いのに。

「うん? それは笑う時は決めてるから。大
切な人の時でしか笑わないから」