片手で丸を作って

 そう言って連れてこられたのは、理科室だ
った。

「なんでここ?」

 僕は陸与陽に聞くと、僕の肩から離してから
窓際の方へ顔を上げた。

 僕がいる後ろを振り返る。

「理科室って、使っていないことが最近、多
いからここだと二人っきりになれるでしょ」 

 不敵な笑みを浮かべて、僕に言う。

 二人きりと言う言葉に僕はしどろもどろし
た。

 この人、意味分かって言ってるの。

 二人きりになりたいって意味?

 それとも、話したいことがあるから?

「………なんでそんなこと言うの」

「…明は俺に話したいことがあったから探してくれたんでしょ」

 僕は目を丸くした。

 見ていたのか、陸与陽を探していた所を。

「なんで。探してる所見てたの?」

 僕はそう問いかけると、陸与陽は思い出し
たかのように微笑んで言っていた。

「……嬉しかったから。慌てて探してくれる
姿とか見たら、すごい嬉しかった。だから、
隠れてた」

 陸与陽は理科室にあったフラスコを手にし
て、左右に揺らして、フラスコの中を眺めて
いた。

「……変態だね」

「え? 変態。アハハアハハアハハ」