片手で丸を作って

 聡は「与陽がお世話になってます」と軽く礼をして言った。

 僕はあの言葉を見逃さなかった。

 ーーー俺ら以外に話す人初めてみたという言葉に。

「与陽も言えばいいのに。話せる人いるって」

 実は、この~と右腕でわき腹にツンツンとしてい
た。

「うるさいよ。お前らがそういう風になるの
分かっていたから言わなかったんだよ。って
か、俺らは俺らで仲良くやってるから、お構
いなく。またな」

 陸与陽はじゃあと右手で挙げてから、僕の
肩を組んで、歩き始めた。

 どういうこと? 

 え? 僕に言ってるの。

 僕は陸与陽が言う仲良くやっているという
のは友達としての認識なのだろうか。

 仲のいい友達にも言っていないということ
は僕たちが仲良くなっているのを知られたく
なかった? 

 それとも、僕らだけの秘密ということなのか。

「ねぇ、ちょっと待ってよ。どこ行くんだよ」

 僕らは肩を組んでそのまま歩いていた。

 僕と与陽は身長差がある。

 僕は一六五㎝で陸与陽は一八〇㎝以上あり、
二〇㎝の身長差がある。

 肩を組んで辛いのは、陸与陽なのに腰も痛
くないのか余裕そうにしていた。

「俺が気に入っている場所」