片手で丸を作って


 うっ、そんな見つめられると僕の心臓が飛
び出そう。本当にやめて。

 この人、なんなの。

 無意識でやってるの。

 なんて言えばいいかわからなく困っている
と、男子二人組が陸与陽に話しかけてきた。

「与陽。いないかと思えば、なにしてんだ」

 陸与陽の友達だろうか。 

 親しげに話しかけてくる所を見ると、同級
生か。

「聡と実」

 聡と実がヨッと手を挙げていた。

「なにって、明と話してんの」 

 陸与陽は平然と僕の名前を呼んでいた。

 初めて……ふいうちで呼ばれた。 

 聡と楽しそうに話す陸与陽を横目に見た。

 いつも見ているのは、クールな顔だけ。

 同級生と話している姿は、僕と話している
時とはまた別人のように見えた。

「瓜生明くんだよね。ドーナツ大好きの」

 実はズボンのポケットに手を突っ込んでか
ら、確かめるように聞いていた。

「そうだけど。僕ってそんな有名なの?」

 僕を知っている人がそんなにいるとは思わなかった。

「そりゃ、そうだよ。男子でドーナツ好きな
のっていないし。与陽と仲がいんだ。初めて
見るよ、俺ら以外に話している人」