片手で丸を作って

 二本分あった。

「朔。あとで。僕寄るところあるから」

「そんな走って行くところあるのか?」

 大きい声で朔は言うので、僕は「あるー!」と山の中で叫んでいるかのように叫んで手を振って、大股で
どこかへ消えた。 

 陸与陽がどこに行ったのか分からず、僕は左右を見渡して、探していた。

 すると、「どうした?」と声を掛けてくれ
た人がいた。

「……陸与陽!」 

 僕が探していた陸与陽が目の前にいた。

 思わず、見つけた嬉しさからか陸与陽に抱
きついた。

「え? 本当どうしたの?」

 陸与陽は驚いたことだろう。

 急に抱きついてきた僕を陸与陽は両手をあ
げてから、そっと僕の背中を優しく叩いた。

 陸与陽から背中を撫でられたことで、僕は
今の状況にハッとして現実に戻ってきた。

「あ、ゴメン。思わず……」

 陸与陽に抱きついた僕は恥ずかしくなり、
陸与陽の顔を見れなかった。

 どうしようと目を泳がせて、それ以上声を
出せなかった。

「おーい、大丈夫?」

 僕のことを心配してきたのか顔を覗かせて
きた。

 下を向いたままの僕を陸与陽は両膝を曲げて、じっと瞬きせずに見つめて、僕が声を出すのを待っていた。