片手で丸を作って

「……与陽さ、そういう所あるよね。俺らだ
けじゃなくて、他の人にもこういう一面見せ
た方いいと思うけどな。実もそう思わない? 
実」

 聡は頬杖をして、隣に座っている実に話し
かける。

「……いんじゃない。与陽がそう思うなら、
俺は恋愛しない派だからさ。恋愛を否定して
いる訳じゃないけど。変わったからって恋愛
じゃないかもしれない。違うことかもしれな
いのに」

 ゲームをしながら実は聡に論破する。

「そう言われたらさ、俺、言い返せないの分
かってるでしょ。与陽は与陽で幸せならいい
んだよ。でも、なんかあったら言えよ」

 聡は与陽を心配して、俺の頭をポンポンす
る。

「分かったよ」

 返事をした俺は机に置いていた携帯を持ち
直した。

 恋愛・幸せ・自分が変わったこと。

 それだけで周囲には自分がどう変化したの
か分かるのか。

 俺は恋愛・幸せ・変わったことの三つの項
目にも当てはまらない。

 恋愛とか俺には人生の中にないと思ってい
る。

 あったって意味があるのかと。

 そんな時だった。

 あなたに会った時にはもう恋に落ちていた
のかもしれない。