片手で丸を作って


 あなたを見て、笑っている。

 それを陸与陽(くがたくや)がデコピンを
する。

「与陽!」
 瓜生明(うりゅうみょう)は陸与陽に叫ん
で、名前を呼ぶ。

 その笑顔があったから、この狭い空間にい
られた。

 あなたの見えないツッコミが心を晴れやか
になった。

「与陽!」

 あなたの笑顔があったから。

        *

「明。また、ドーナツ?」  

 友達の朔(さく)がため息を吐いて、頬杖
をしていた。

「なんでダメ?」

 首を傾げて、自分の机に座っていたので、
鞄に入っていたドーナツ袋を机に出して広げ
ていた。

「今、一時限目終わったばかりなのにもうド
ーナツ食べるのか?」

 一時限目にあった数学の授業が終わったば
かりだが、もうドーナツを食べている。

 僕は学校に来る前に朝ご飯を食べてきたが、
もうお腹が空いていて、お腹を押さえて我慢
をしていた。

 だが、もう我慢の限界だ。

「…もう、無理なのよ。朔、分かるでしょ」

「どんだけあんだよ。ドーナツ」

 ドーナツ袋に入っていた六つのドーナツを
見て、愕然とした。