あれから私たちの関係が続いてまた半年ほど経った。

大地くんは高校を卒業し、私はこの春休みが明けたら、2年生になる。

今だに私は気持ちに蓋をしたままだ。

言わなくてもわかってくれるそう信じているから、あえて気持ちを伝えたりはしない。

大地くんに私の気持ちは届いているのだろうか。

彼の私への態度はあの日と変わらず冷め切っているけれど、きっと私が1番、私の事大事に思ってくれている、そう思ってくれていると信じている。

いや、信じていたい。

あの日自分の気持ちを伝えてからと言うもの、私は大地くんに正直に思いを伝えるのが怖くなった。

重いって思われそう、めんどくさいって思われそう。

そう思うとなかなか勇気が出ない。

でも私は今もずっと大地くんのことを愛してる。

大丈夫、自分の気持ちを出さなきゃ良いだけ。

それだけで大地くんの隣に居られるから。

その為なら私はなんだってするよ。

いくらでも我慢できるよ。

ところで明日は私の誕生日だ。

時計と針は夜の11時38分を指している

あと20分で私は16歳になる。

私は遅生まれで、みんなより一つ下になる。

毎日の日課の大地くんとの寝落ち通話。

あまり話したりはしないがそれが私の毎日の楽しみだ。

通話が繋がっているだけでなぜか安心できる

今では2ヶ月に一回会えたらいい方なので私と大地くんの繋がりはこの通話しかないように感じる

今日も通話をする為大地くんへメッセージを送った

「大地くん、通話できる?」

「ごめん、今日は無理かな」

いつもは遅くなってもしてくれている通話が今日は断られた。

「なんで?私明日誕生日だから通話したいんだけどそれでも無理かな?」

私は少し申し訳なさそうにそう伝えた

「今日は違う女の子と通話するから、また終わったらかけるわ」

私の誕生日なのに

誕生日くらい、私のこと優先してよ。

私の今までの我慢はなんだったの

あんなに我慢して浮気だって、女絡みだって、許してきたのに。

誕生日ですら私のそばにいてくれないなんて。

別に見返りを求めてた訳ではないが、流石に酷く傷ついた。

「私の誕生日くらい一緒にいてよ!なんで他の女の子と通話するの?」

私の今まで蓋をしていた気持ちが少し溢れ出てしまった。

「いや、俺がいつ誰と通話しようが俺の自由じゃん?なんで優奈に文句言われないといけないの?また俺のこと束縛するん?そういうところが重いって言ってるんじゃん、前と何も変わってないじゃん」

そう送ってくる大地くんに私は今まで我慢してきたものが心底馬鹿らしく感じた

「そうだよね、もういいよ。ごめんね」

やっぱり私の気持ちは大地くんには届いて無かったんだね。

私は誕生日を2人で過ごしたかっただけなのに。

こんな私の願いも大地くんには届かない。

私、大地くんとこれからも一緒にいれるのかな。

離れたほうがお互いのためなのかもしれない。

考えただけで頭が痛い

1人で悩むのはもう疲れた。

誰かに話を聞いてもらいたい。

そうだ裕也先輩に相談しよう、最近の友達との大地くんの様子を聞きたい。

そう思い私は裕也先輩にメッセージを送った。

「高校卒業おめでとうございます。
お久しぶりです、相談あって連絡しました」

裕也先輩、大地くんのことなんでも知ってるし、相談したら共感してくれて、話しててスッキリするんだよね。

5分もしないうちに裕也先輩から返信が来る

「あー、ありがとう!
久しぶり、どうした?大地のこと?」

「そうなんですよ。お話聞いて欲しいです。」

「うんうん、話聞くくらいなら大丈夫だよ」

「ありがとうございます!私あと10分くらいで誕生日なんですよ、それで大地くんと話したくて通話誘ったら、他の女の子と通話してるから出来ないって言われて、私は大地くんと一緒にいたかっただけなのに、ほんとに辛かったんですよ、それで話聞いてもらいたくて、連絡したんです」

「え!そうなの?誕生日おめでとうだね!
それは辛いよね。大地の女の子事情とかあんまり聞かないからわからないんだよね。誰なんだろう」

大地くんからは明日誕生日なんて言ってもおめでとうなんて一言も言ってもらえなかったな。

誰かに誕生日を祝ってもらえたことがとても嬉しく、少し泣きそうになった。

「ありがとうございます!裕也先輩も知らないんですか!誰なんだろう。」

裕也先輩も知らないなんて、前ナンパしてた人とかではないのかなぁ

「わからんけど、俺から大地に話してみようか?浮気とかはやめなよって」

「大丈夫かな、裕也先輩から言われたら大地くんも変わってくれるかもしれない。前も裕也先輩と博樹先輩と遊んでる時ナンパしたとか言ってて浮気してないか不安なんですよ」

「あー、結構前じゃん。俺と博樹は止めたんだけど大丈夫って聞かないから大地がいいならいいんだけどってなって俺はしてないんだけど、大地と博樹でナンパしてたんだよね」

「そういうことだったんですね。止めてくれてありがとうございます。それで私がやめてって言っても束縛せんといてって言われちゃって、そっからは大地くんのプライベートには口出ししないようにしてたんですけど、流石に今日のは私も見逃せなかったんですよ」

「そうだったんだね。いろいろ我慢してたでしょ、大地のことだからね、自分の思い通りにならなかったら怒るんだから笑困っちゃうよね笑」

そういう裕也先輩のメッセージは画面越しでもわかるほど、裕也先輩も悲しんでいることが伝わってきた。

「なんで、裕也先輩もちょっと辛そうなんですか!笑」

「だって、俺の友達が彼女に辛い思いさせたり、いろんな女の子と関係持ったりしてるかもしれないって考えたら嫌な気持ちになるからね笑」

裕也先輩と直接話したことはないがとても心が綺麗な人ということが伝わってくる。

「優しいんですね笑別れた方がいいのかな、、」

「そんなことないよ、普通だよ?優奈ちゃんはどーしたいの?」

私の気持ち。

ずっと大地くんに合わせてきていた私はいざ自分の気持ちを考えてみるといまいちわからない。

「わからないです。私は大地くんと一緒にいたいけど、今のままでは辛いことは確かです」

「もう俺なら自分のこと大切にされてないって感じたら別れようってなるかもなぁ」

大切か…

大地くんに私は本当に大切にされてるのかな?

「私って大地くんに大切にされてるんですかね?笑」

「俺は話聞く感じではされてないって感じるよ」

やっぱり側からみたらそうだよね。

私は大地くんに依存してるからそう思わないだけで、普通の人が見たら誰でもそう言うよね。

多分瑠奈に聞いても同じ回答が返ってくるのが予想できる。

「やっぱりそうですよね。私って多分依存してるんですよね。大地くんが居ないと、大地くんと一緒じゃないとってずっと大地くんのこと追いかけて、重いって言われちゃったし、そう思われてもしょうがないですよね笑」

「依存は良くないよね。自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先できるのはダメなことではないけど、それが続くとしんどいでしょ?重くなんかないよ。それくらい大地のこと想ってるってことでしょ?優奈ちゃんの想いが大きいだけ」

想いが大きい…

その言葉に私は胸がキュッと締め付けられたように苦しくなった。

私のこと重くないって思ってくれる人がいるんだ、私のこと否定しないでいてくれる人がいるんだ、
そう思うと自分の存在が認められているように感じて、さっきまでの自分のことを責める気持ちが少し和らいだ。

「そんな私のこと肯定してくれるの裕也先輩しかいませんよ。大地くんの私への優先順位が最近下がっているように感じて、自分じゃダメなのかなとか思ってたんで、裕也先輩にそう言ってもらえて嬉しいです。」

「優奈ちゃんは本当にいい子だと思うよ。やっぱり俺から今日大地に話してくるよ」

裕也先輩からだったら大地くんも変わってくれるかも。

「お願いしたいです」

「わかった。じゃあ今から連絡してみるわ」

「ありがとうございます」

これで大地くんが変わってくれるなら…

そう思い、裕也先輩の提案を受け入れた。

でも大地くんに怒られるかもしれない。

そんな不安もありながらも私は連絡を待った。

私は気付けば眠りについていてた。